第33話 地下探索! ゴーストタウンに眠る秘密
「本当に、ここから入るの?」
ルミナが不安そうに尋ねた。
「ああ。」
ヨイは、ゴーストタウンの中央にある古い時計塔を見上げた。
昨日まで何の変哲もなかった時計塔。
しかし、ルナが目覚めてからというもの、地下へ続く魔力の流れがはっきり見えるようになっていた。
「地下への入口は、この時計塔の下にある。」
ルナが小さな杖を握りしめる。
「たぶん……。」
「たぶん?」
「うん。」
「大丈夫か?」
「大丈夫。」
ルナは小さく頷いた。
「私、この街のこと……少しずつ思い出してる。」
「なら、行ってみよう。」
ヨイが古い石床に手を置く。
「開け!」
何も起きない。
「……。」
「ヨイ?」
「ちょっと待って。」
ヨイは考える。
「魔法じゃなくて、仕掛けかもしれない。」
周囲を見回す。
時計塔の壁。
古い歯車。
カボチャの彫刻。
そして、床に刻まれた文字。
『笑う者に道は開く』
「……笑う者?」
パンプが近づく。
「ぼく、笑えるよ!」
「いや、そういう意味じゃ――。」
パンプはニッと笑った。
その瞬間。
カチッ。
床の奥から音がした。
「え?」
ゴゴゴゴゴ……。
石床が左右に開いていく。
「開いた!」
ココが驚く。
パンプは胸を張った。
「ぼくの笑顔の力!」
「たぶん違う。」
ヨイは苦笑した。
「でも結果オーライ。」
階段が現れた。
地下へ続く、長い石造りの階段。
壁には古いランタンが並んでいる。
ルナが先頭に立つ。
「こっち。」
「分かるのか?」
「魔力が呼んでる。」
一行は慎重に階段を下りていった。
しばらくすると――。
「……広い。」
地下には巨大な空間が広がっていた。
そこには、古い街の跡が残っている。
小さな家。
屋台。
広場。
そして――。
無数のカボチャの飾り。
「ここ……。」
ヨイは息を呑んだ。
「昔のゴーストタウン?」
ルミナが呟く。
「そう。」
ルナが答えた。
「ここが……昔の街。」
壁には絵が描かれている。
人間。
ゴースト。
ゾンビ。
魔物。
みんなが一緒に食事をしている。
仮装して踊っている。
子供たちがカボチャをくり抜いている。
「……。」
ヨイは絵を見つめる。
「昔から、人間と魔物が一緒に暮らしてたんだな。」
「うん。」
ルナは寂しそうに頷く。
「私も……ここにいた。」
「どんな役割だったの?」
「分からない。」
ルナは頭を押さえた。
「でも、祭りの日には――。」
「魔法を使って、街を明るくしてた。」
「それで?」
「みんなが笑ってた。」
ルナは嬉しそうに微笑む。
その時。
奥から音がした。
カタン。
「……。」
全員が振り返る。
「今、何かいた?」
ココが小声で言う。
「気のせいじゃない。」
アルがマントを広げる。
「何かがいる。」
パンプが震える。
「こ、怖くないよ。」
「震えてるぞ。」
「寒いだけ!」
「地下だからな。」
ヨイは苦笑しながら前へ進む。
すると。
石碑が見えてきた。
昨日、ルナを目覚めさせたものと同じ石碑。
しかし――。
今日は、その前に小さな箱が置かれていた。
「これは?」
ルナが近づく。
「待って!」
ヨイが止める。
「罠かもしれない。」
「でも……。」
箱から微かな魔力が漏れている。
ヨイは慎重に近づき、箱を調べた。
「魔力は……危険じゃない。」
「開ける?」
「うん。」
ヨイが蓋を開ける。
中に入っていたのは――。
一枚の古い紙。
そして、小さなカボチャの種。
「種?」
ルミナが首をかしげる。
ヨイは紙を読む。
そこには古い文字で、こう書かれていた。
『この街のハロウィンは、恐怖を楽しむ祭りではない。』
『人と魔物が同じ場所で笑うための祭りである。』
『もし再び祭りを始める者が現れたなら――』
『カボチャの種を街の中央へ。』
『そして、灯りをともせ。』
ヨイは紙を読み終えた。
「……。」
「どうしたの?」
ルミナが聞く。
ヨイは笑った。
「俺たちがやってることと、同じだ。」
「え?」
「昔のハロウィンも。」
「人間と魔物が一緒に楽しむ祭りだった。」
ルナの瞳が輝く。
「……じゃあ。」
「うん。」
ヨイは頷いた。
「俺たちは間違ってなかった。」
その時。
地下全体が――。
ゴゴゴゴゴ……!
大きく揺れた。
「な、何!?」
ココが叫ぶ。
「地震!?」
「違う!」
ルナが杖を握る。
「地下の魔力が動いてる!」
「どこから?」
ルナが奥を見る。
「もっと奥。」
「行くぞ!」
ヨイたちは走った。
地下通路を抜ける。
すると。
そこには巨大な扉があった。
扉の中央には――。
巨大なカボチャの紋章。
「これ……。」
ヨイが近づく。
すると。
扉の向こうから声が響いた。
『……ようやく。』
『祭りが始まる。』
「誰だ!」
ヨイが叫ぶ。
『私は――。』
『この街の、古い祝祭を守る者。』
ルナが目を見開く。
「……知ってる。」
「え?」
「この声……。」
ルナの顔が青ざめる。
「昔、私に魔法を教えてくれた人。」
「誰?」
ルナが呟く。
「……おばあちゃん。」
「おばあちゃん?」
『ルナ。』
扉の向こうから声がする。
『よく目覚めましたね。』
ルナが一歩前へ出る。
「おばあちゃん……?」
『あなたが眠っていた間も、私はずっと待っていました。』
「どうして?」
『もう一度、ハロウィンを始めるためです。』
ヨイが扉を見る。
「待ってくれ。」
『何でしょう?』
「明日の祭り。」
ヨイは拳を握った。
「俺たちがやる。」
『ええ。』
声が優しく笑った。
『だからこそ――。』
『明日の夜、この街の本当のハロウィンを始めなさい。』
「本当のハロウィン?」
『そう。』
『ただの仮装祭りではありません。』
『この街に眠る魔力を解放し――。』
『人間と魔物が、再び同じ夜を笑って過ごすのです。』
ルナが涙ぐむ。
「……私も、やる。」
ヨイはルナの肩に手を置いた。
「もちろん。」
そして――。
地下の扉に、ゆっくりと光が走った。
だが、扉は開かない。
『まだ時ではありません。』
『明日の夜。』
『鐘が十二回鳴った時――。』
『この扉は開きます。』
「十二回……。」
ヨイは時計塔を思い出す。
「それが、ハロウィンの本番か。」
『ええ。』
『それまでに――。』
『街を完成させなさい。』
声が消える。
地下は静寂に包まれた。
ヨイは仲間たちを見る。
「……やることが増えたな。」
ルミナが笑う。
「明日までに全部完成させるわよ。」
パンプが拳を上げる。
「おー!」
ココも続く。
「頑張ります!」
アルも笑う。
「夜のパレードは任せろ。」
そしてルナ。
「私も。」
ヨイは笑った。
「よし。」
「帰ろう。」
「明日のハロウィンを――。」
「最高の一日にするぞ!」
一行が地上へ戻ったあと。
誰もいなくなった地下で。
石碑の文字が再び光った。
『祝祭まで――あと一日。』
そして巨大な扉の向こうから。
小さな笑い声が聞こえた。
「ふふ……。」




