第29話 巨大カボチャの声!? 魔力を求める謎の存在
「もっと……魔力を……。」
昨夜聞こえた声が、ヨイの頭から離れなかった。
朝になっても、ヨイは畑の巨大カボチャをじっと見つめていた。
黒に近い紫色。
表面には、普通のカボチャにはない複雑な模様。
そして何より――。
「……こいつ、本当に喋ったのか?」
ヨイが小さく呟く。
「誰が喋ったの?」
背後から声がした。
振り返ると、ルミナが立っている。
「昨日の夜、こいつから声が聞こえた。」
「カボチャから?」
「うん。」
「……。」
ルミナは巨大カボチャを見る。
しばらく沈黙したあと。
「聞いてみましょう。」
「え?」
「私にも聞こえるかもしれない。」
ルミナは恐る恐るカボチャへ近づいた。
「こんにちは。」
「……。」
「あなたは何?」
「……。」
返事はない。
ルミナは首をかしげる。
「何も聞こえないわ。」
「俺には聞こえたんだけどな。」
「疲れてるんじゃない?」
「そうかな。」
ヨイがカボチャに手を伸ばす。
その瞬間。
ドクン。
「!」
やはり。
魔力が脈打った。
そして――。
『……もっと。』
「聞こえた!」
ヨイが叫ぶ。
「本当に!?」
ルミナが驚く。
「今、聞こえた?」
「俺にははっきり。」
ヨイはもう一度手を当てる。
『もっと……魔力を……。』
「どうして魔力が欲しい?」
しばらく沈黙。
そして。
『……生まれたい。』
「生まれたい?」
ヨイとルミナは顔を見合わせた。
『まだ……眠い。』
『もっと魔力があれば……起きられる。』
「起きるって……。」
ルミナの表情が少し険しくなる。
「まさか、中に何かいるの?」
ヨイはカボチャを見る。
「卵みたいなものかもしれない。」
「危険じゃない?」
「分からない。」
「またそれ……。」
ルミナがため息をつく。
「でも。」
ヨイは巨大カボチャから手を離した。
「今は魔力をあげない。」
「え?」
「どんな存在なのか分からないから。」
ヨイは真剣な顔になった。
「ハロウィンまで時間がない。」
「もし危険な存在だったら、街のみんなを巻き込むことになる。」
「だから、正体が分かるまで観察する。」
ルミナは少し安心したように頷いた。
「珍しく慎重ね。」
「俺だって学習するんだよ。」
「誰が珍しくよ。」
二人が話していると――。
「社長ー!」
遠くからパンプの声がした。
「どうした?」
「大変!」
パンプが走ってくる。
その後ろには、カボチャモンスターたちがぞろぞろと続いている。
「みんなが勝手に仕事してる!」
「それはいいことじゃないか。」
「違う!」
パンプが指を差す。
「屋台を増やしてる!」
「……え?」
広場へ行ってみる。
そこには――。
昨日まで三つしかなかった屋台が。
六つになっていた。
「……。」
ヨイは黙る。
カボチャモンスターたちは得意そうに胸を張っている。
「自分たちで作ったの?」
一斉に頷く。
「すごいな……。」
ヨイは感心した。
「これなら、お客さんが増えても大丈夫そうだ。」
ルミナも屋台を確認する。
「料理の場所。」
「ゲームの場所。」
「お菓子。」
「飲み物。」
「役割分担までできてる。」
「優秀すぎる……。」
すると、一体のカボチャがヨイの服を引っ張った。
「ん?」
カボチャは地面に絵を描く。
カボチャ。
屋台。
そして――。
大きな丸いもの。
「これは?」
カボチャが畑を指差す。
ヨイは考える。
「……巨大カボチャ?」
こくこく。
「料理に使いたい?」
ぶんぶん。
「飾り?」
こくこく。
「なるほど。」
ヨイは笑った。
「巨大カボチャを街のシンボルにするのか。」
カボチャたちが一斉に喜ぶ。
「いいじゃん。」
ヨイは畑を見る。
そして、あの紫色の巨大カボチャへ視線を向ける。
「……。」
「どうしたの?」
ルミナが尋ねる。
「いや。」
ヨイは首を振った。
「こいつも、いつか街のシンボルになるのかなって。」
その瞬間。
巨大カボチャが――。
ドクン。
「……。」
ヨイは眉をひそめた。
『……なる。』
「!」
『大きく……なる。』
ヨイは思わず一歩後ろへ下がった。
「今、なんて?」
ルミナが尋ねる。
「こいつ……。」
ヨイは巨大カボチャを見つめる。
「『大きくなる』って。」
「……。」
ルミナの顔が引きつった。
「それ、どういう意味かしら。」
「さあ。」
ヨイは困ったように笑う。
「でも――。」
巨大カボチャの表面を見つめる。
「なんとなく、悪い奴じゃない気がする。」
ルミナは腕を組む。
「根拠は?」
「ない。」
「でしょうね。」
「ただ、魔力を欲しがっているだけなら――。」
ヨイは笑った。
「ちゃんと話し合えばいい。」
「話し合えるカボチャなの?」
「今のところは。」
ルミナは呆れながらも、少しだけ笑った。
「本当に変な街ね。」
「最高だろ?」
「……まあ。」
ルミナは街を見渡した。
ゴースト。
ゾンビ。
カボチャモンスター。
学園の生徒。
そして人間の少年。
本来なら交わるはずのなかった存在たちが、一緒にハロウィンを作っている。
「うん。」
ルミナは小さく笑った。
「最高かもしれない。」
その頃。
学園では――。
ハロウィン・フェスティバルの噂が、さらに広がっていた。
「ゴーストと一緒に働ける!」
「カボチャモンスターがいる!」
「お化け屋敷もある!」
「夜にはパレードだって!」
そして。
ある一人の教師が掲示板を見ながら呟いた。
「……ゴーストタウンが、こんなに人を集めるとは。」
その隣の教師が笑う。
「今年一番の話題になるかもしれませんね。」
「しかし。」
教師は少し心配そうに目を細めた。
「ゴーストタウンには、昔から妙な噂があります。」
「噂?」
「あの街の地下には――。」
その言葉が出たところで。
ゴーン……。
鐘の音が鳴った。
教師はそれ以上、何も言わなかった。
一方。
ゴーストタウンの地下深く。
誰も知らない場所で。
古い石碑に刻まれた文字が、ほんのりと光り始めていた。
『ハロウィンの夜、眠れるものは目覚める』
そして。
その文字を照らす魔力が――。
少しずつ強くなっていく。




