第27話 誕生!? カボチャモンスター第一号
「手が生えてるって、どういうこと!?」
ヨイは畑へ向かって走っていた。
その後ろをルミナ、パンプ、ココ、アルが続く。
「だから手が生えてるの!」
パンプが叫ぶ。
「カボチャなのに!」
「それは大問題ね……。」
ルミナの顔が引きつる。
「まさか魔力を与えすぎたんじゃ……。」
「それは、まだ分からない。」
ヨイは畑に到着すると、足を止めた。
「……。」
そこには――。
昨日まで普通に畑に転がっていた巨大なカボチャがあった。
ただし。
普通ではない。
カボチャの左右から、細い緑色の腕が二本。
そして下には、短い足が二本。
さらに。
カボチャの表面には、いつの間にか二つの目と大きな口までできている。
「……。」
カボチャがヨイを見る。
ヨイもカボチャを見る。
「……おはよう。」
「……。」
カボチャは黙っている。
「おはよう?」
「……。」
すると。
ぺこっ。
カボチャが頭を下げた。
「しゃべった!?」
ルミナが飛び上がった。
「しゃべってない。」
「でも今、挨拶したわよね!?」
「動いただけだと思う。」
ヨイはしゃがみ込んだ。
「君、自分で動けるのか?」
カボチャは首を横に振る。
「じゃあ、歩ける?」
今度は縦に振った。
「……なるほど。」
ヨイの目が輝く。
「意思がある。」
「そこを喜ばないで!」
ルミナが叫ぶ。
「危険な魔物かもしれないのよ!」
「でも。」
ヨイはカボチャの前に手を差し出した。
「敵意はない。」
カボチャはしばらくヨイの手を見る。
そして。
ちょこん。
小さな手を重ねた。
「……。」
「かわいい。」
ココが小さく呟いた。
パンプも近づいていく。
「こんにちは!」
カボチャはパンプを見る。
そして――。
ぺこっ。
「こんにちは!」
パンプが嬉しそうに笑う。
「仲間だ!」
「いや、まだ分からないでしょう。」
ルミナは慎重だった。
「ヨイ。」
「ん?」
「この子、どうやって生まれたの?」
「たぶん魔力付与。」
ヨイはカボチャを見る。
「植物が魔力を吸収しすぎて、普通のカボチャとは違う存在になった。」
「つまり……。」
「魔力植物。」
ルミナは眉を寄せた。
「それって大丈夫なの?」
「分からない。」
「でしょうね……。」
ヨイはカボチャの周囲を調べる。
魔力の流れは安定している。
攻撃性も感じない。
むしろ――。
「お腹が空いてるみたい。」
「え?」
ココがカボチャを見る。
「お腹空いたの?」
カボチャが頷く。
「……カボチャなのに?」
パンプが首をかしげる。
ヨイは笑った。
「植物だって栄養は必要だ。」
「じゃあ、何を食べる?」
みんなで考える。
「水?」
「肥料?」
「カボチャ?」
「カボチャがカボチャを食べるの?」
ルミナが困った顔をする。
するとカボチャが、畑の隅にある小さなカボチャを指差した。
「……。」
ヨイが目を丸くする。
「それ、食べたいの?」
こくこく。
「なるほど。」
ヨイは小さなカボチャを一つ持ち上げた。
「はい。」
カボチャモンスターは、嬉しそうに受け取る。
そして――。
ぱくっ。
「……。」
「食べた。」
ココが驚く。
「普通に食べました!」
カボチャモンスターは、もぐもぐと小さなカボチャを食べている。
そして。
「……。」
食べ終わると、満足そうにお腹を撫でた。
「かわいい……。」
ココの目が完全にハートになる。
パンプもしゃがみ込む。
「名前つけようよ!」
「また?」
ルミナが苦笑する。
「仲間なら名前が必要!」
ヨイは少し考えた。
カボチャ。
魔力。
そして――。
ハロウィン。
「パンプ。」
「うん?」
「この子の名前、どうする?」
「パンプキン!」
「それは普通すぎる。」
「じゃあ、カボ!」
「短すぎる。」
「マギカボ!」
「それは種類の名前だな。」
「うーん……。」
パンプが腕を組む。
すると、カボチャモンスターが自分の頭を指差した。
「?」
そして。
両手で何かを作るような仕草をした。
ヨイは考える。
「……ジャック?」
カボチャがぴょんと跳ねた。
「気に入った?」
こくこく!
「じゃあ、君はジャックだ。」
「ジャック!」
パンプが嬉しそうに叫ぶ。
ココも笑顔になる。
「よろしくね、ジャック!」
ジャックは嬉しそうに手を振った。
「これは……。」
ルミナはため息をついた。
「また一人、仲間が増えたわね。」
「そうだな。」
ヨイは笑った。
「でも、ジャックには仕事がある。」
ジャックが首をかしげる。
「ハロウィンの街を一緒に作るんだ。」
ジャックは両手を上げた。
やる気満々らしい。
その日の午後。
ジャックはさっそく仕事を始めた。
小さな手でカボチャを運ぶ。
よいしょ。
よいしょ。
「すごい!」
パンプが驚く。
「ぼくより力持ち!」
ジャックは得意げに胸を張った。
さらに。
ジャックがカボチャを並べると、不思議なことに綺麗な列になる。
「意外と器用なのね。」
ルミナも感心する。
ヨイはジャックの頭を撫でた。
「助かるよ。」
ジャックは嬉しそうに笑った。
こうして。
ゴーストタウンに新しい仲間が加わった。
その存在は、後にハロウィンの街を象徴する人気キャラクターになる。
しかし――。
ヨイはまだ知らなかった。
ジャックの誕生をきっかけに。
畑の魔力カボチャたちが、次々と変化を始めていることを。
夜。
誰もいなくなった畑。
一つ。
また一つ。
カボチャの表面に、顔が浮かび上がる。
そして――。
「……。」
小さなカボチャが、ゆっくりと目を開いた。




