第26話 カボチャ料理店、開店! 異世界初のパンプキンスイーツ
「次は食べ物だ!」
翌朝。
ヨイは広場の中央で宣言した。
お化け屋敷は完成した。
スタッフも集まった。
次に必要なのは――。
「ご飯!」
パンプが元気よく叫ぶ。
「お菓子です!」
ココも負けじと手を挙げる。
「その通り。」
ヨイは頷いた。
「祭りで一番大事なものの一つ。」
「食べ物だ。」
学園から来ている生徒たちも大きく頷く。
「確かに。」
「食べ歩きは楽しいよな。」
「屋台が少ない祭りは寂しい。」
ルミナは手帳を確認する。
「問題はメニューね。」
「カボチャ料理を中心にしたいんでしょう?」
「もちろん。」
ヨイは笑った。
「ハロウィンだからな。」
広場の隅には収穫されたカボチャが山のように積まれている。
普通のカボチャ。
マギカボ。
少し紫色がかった魔力カボチャ。
どれも立派に育っていた。
「まずは定番。」
ヨイは黒板に書き始める。
・パンプキンスープ
・カボチャの串焼き
・カボチャパイ
・カボチャパン
・カボチャプリン
「多くない!?」
ルミナが思わず声を上げた。
「祭りだぞ?」
「全部作る。」
「誰が?」
「みんなで。」
その瞬間。
全員が顔を見合わせた。
そして。
「面白そう!」
「やる!」
「料理は得意です!」
学園生たちも盛り上がり始める。
ヨイは満足そうに頷いた。
「まずは試作品だ。」
その日の午前中。
ゴーストタウンは料理の香りに包まれていた。
ぐつぐつ。
大鍋ではスープが煮込まれる。
こんがり。
パンが焼き上がる。
甘い香りが広場へ流れていく。
「できました!」
ココが最初に持ってきたのはパンプキンスープだった。
木の器に盛られた鮮やかな黄色。
湯気が立ち上っている。
「いただきます。」
ヨイは一口飲んだ。
「……。」
「どう?」
ココが緊張した顔で見つめる。
ヨイはゆっくり顔を上げた。
「うまい。」
「本当ですか!?」
「甘い。」
「優しい。」
「温かい。」
ココの顔がぱっと明るくなった。
「やった!」
続いてアルが運んできた。
「こちらは特製パンプキンパイだ。」
「おお。」
焼き色のついたパイ生地。
中にはたっぷりのカボチャ餡。
見た目だけでも美味しそうだ。
ヨイは一口食べた。
「……。」
「どうだ。」
アルが珍しく少し緊張している。
「これ。」
「うん。」
「売れる。」
「そうか。」
アルは小さく笑った。
「良かった。」
その頃。
パンプは別の屋台で悪戦苦闘していた。
「なんでだー!」
「どうした?」
ヨイが近づく。
目の前には真っ黒な物体。
「クッキー作った!」
「……。」
「クッキーだよ!」
「本当に?」
「本当!」
ヨイは恐る恐る一枚持ち上げた。
硬い。
とても硬い。
木材みたいに硬い。
「これは。」
「うん。」
「武器かな?」
「クッキー!」
パンプが抗議する。
周囲の生徒たちが吹き出した。
「ははは!」
「それは無理だ!」
「投げたら危険だろ!」
パンプは頬を膨らませる。
「失敗しただけだもん!」
「じゃあ一緒に作ろう。」
ヨイは笑った。
その後。
ココと学園生たちが先生役になり、パンプにお菓子作りを教え始めた。
すると。
夕方には。
「できた!」
可愛らしいカボチャ型クッキーが並んでいた。
「おお!」
「上手じゃないか。」
「へへへ。」
パンプは満足そうに笑う。
その様子を見ていた子供たちも集まり始めた。
「食べたい!」
「可愛い!」
「これ売って!」
ヨイは思わず笑った。
「もう人気商品じゃないか。」
「やったー!」
祭りの準備は順調だった。
お化け屋敷。
屋台。
広場。
スタッフ。
そして料理。
少しずつハロウィンの街が完成に近づいていく。
しかし――。
その夜。
畑では異変が起きていた。
魔力を大量に与えられたカボチャ。
その表面に入っていた亀裂が、さらに広がっていた。
ピシッ。
ピシピシッ。
まるで卵が孵る直前のような音。
そして。
亀裂の隙間から――。
小さな光が漏れ出した。
「……。」
誰もいない畑。
静かな月夜。
そのカボチャは。
まるで中から何かが出てこようとしているかのように、ゆっくりと震えていた。
そして翌朝。
「しゃ、社長ーーーっ!!」
またしてもパンプの絶叫が街中に響き渡る。
ヨイは飛び起きた。
「今度は何だ!?」
「カボチャ!」
「またカボチャか!」
「カボチャから!」
パンプは息を切らしながら叫んだ。
「手が生えてるーーーっ!!」
「……は?」
ヨイは数秒固まった。
そして。
「見に行こう。」
「普通そこは驚くところでしょう!?」
ルミナのツッコミが朝の街に響き渡った。




