第24話 お化け屋敷、開発開始! 怖すぎる? いや、可愛すぎる!
「まずは、お化け屋敷から作ろう!」
ヨイの宣言に、パンプが勢いよく手を挙げた。
「ぼく、やる!」
「パンプは当然ね。」
ルミナが苦笑する。
「ココも!」
「ココもやりたいです!」
「じゃあ、二人はキャスト。」
「キャスト?」
ココが首をかしげる。
「お客さんを楽しませる役。」
「それなら頑張ります!」
ココは小さな拳を握った。
ヨイたちは街の端にある古い屋敷へ向かった。
長い間使われていなかった建物だ。
窓は割れ、壁にはツタが絡みついている。
床も埃だらけ。
「……本当にここを使うの?」
ルミナが少し不安そうに見上げる。
「最高じゃないか。」
ヨイは目を輝かせていた。
「この古さ。」
「この雰囲気。」
「何もしなくても怖い。」
「つまり、予算ゼロで最高のお化け屋敷が作れる!」
「そこを喜ぶのね……。」
ルミナは呆れながらも、少し笑った。
「でも、このままじゃ危ないわ。」
「分かってる。」
ヨイはすぐに作業を始めた。
床の穴を塞ぐ。
割れた窓を修理する。
危険な場所には柵を設置。
そして、通路を一方通行にする。
「お化け屋敷で一番大事なのは?」
ヨイがみんなに尋ねる。
パンプが手を挙げた。
「怖さ!」
「違う。」
ココが恐る恐る手を挙げる。
「可愛さ?」
「それも大事だけど違う。」
ルミナが答える。
「安全?」
「正解!」
ヨイは満足そうに頷いた。
「どれだけ面白くても、怪我をしたら台無しだ。」
「だから、安全を確保してから演出。」
「なるほど。」
ルミナは手帳に書き込んだ。
「安全第一……。」
その後ろで、パンプがこっそり壁の陰に隠れる。
「……。」
ヨイは気づいていた。
「パンプ。」
「なに?」
「そこから驚かすつもり?」
「うん!」
「じゃあ、やってみよう。」
ヨイが通路を歩く。
パンプが息をひそめる。
そして――。
「わっ!」
パンプが飛び出した。
「……。」
ヨイは無反応だった。
「……。」
パンプも固まる。
「……怖くない?」
「うん。」
「なんで!?」
ヨイは腕を組んだ。
「飛び出すタイミングが早い。」
「お客さんが何も警戒してない場所なら、もっと近づいてから。」
「それと、声が大きすぎる。」
「えっ。」
「びっくりさせるなら、一瞬だけ。」
ヨイは実演する。
パンプがもう一度隠れる。
ヨイが歩く。
足音だけが響く。
一歩。
二歩。
三歩。
そして――。
「……トリック・オア・トリート。」
「うわあっ!」
パンプが飛び出した。
今度はヨイも少し驚いた。
「おお!」
「成功!」
パンプが飛び跳ねる。
「今のいい!」
「やった!」
ココも拍手する。
「私もやってみたい!」
「じゃあココは、最後の部屋。」
「最後?」
「そう。」
ヨイは屋敷の一番奥を指差した。
「ここを『感動ポイント』にする。」
「感動?」
「怖いだけじゃなくて、最後にほっとする場所。」
ヨイはそこに小さなテーブルを置いた。
その上に、お菓子を並べる。
「お化け屋敷を最後まで頑張ったお客さんに、お菓子をプレゼントする。」
「いいですね!」
ココの顔が明るくなる。
「私がお渡しします!」
「うん。」
「そして――。」
ヨイはココに小さな帽子を被せた。
「最後に『お疲れさまでした』って言う。」
「それだけ?」
「それだけでいい。」
ココは鏡を見た。
「……似合いますか?」
「すごく似合ってる。」
ルミナが微笑む。
「可愛いわ。」
「本当ですか?」
ココの頬が嬉しそうに緩む。
「じゃあ、頑張ります!」
その日の夕方。
屋敷の外には、新しい看板が取り付けられた。
『ゴーストタウン名物 ドキドキお化け屋敷』
その下には小さく――。
『怖くても最後まで進んでね!』
と書かれている。
パンプは看板を見上げて満足そうに頷いた。
「かっこいい!」
「まだ完成じゃない。」
ヨイは笑った。
「次は照明。」
「音。」
「そして――。」
ヨイが屋敷の奥を見つめる。
「本物のゴーストたちにも協力してもらう。」
「え?」
ルミナが驚く。
「本物?」
「そう。」
ヨイはニヤリと笑った。
「この街には、お化け屋敷を作るためにわざわざ魔法を使う必要がない。」
「本物のゴーストがいるんだから。」
「……。」
ルミナは数秒黙った。
「それって……。」
「最高のキャストじゃない?」
「……確かに。」
ルミナもついに笑ってしまった。
こうして。
ゴーストタウン最大の名物になる――。
「ドキドキお化け屋敷」の準備が始まった。
しかし、その翌日。
お化け屋敷の試運転をしていたヨイたちは、予想もしなかった問題に直面する。
「……怖すぎる。」
「え?」
ヨイが振り返る。
そこには青ざめた顔の学園生徒たち。
「本物のゴーストが本気で追いかけてくるんだけど!?」
「これはイベントじゃない!」
「逃げないと死ぬ!」
「……。」
ヨイは腕を組む。
そして、ゆっくり笑った。
「なるほど。」
「本物のゴーストは、演技が上手すぎる。」
ルミナが頭を抱えた。
「そこじゃないでしょう!」




