第21話 一晩で三倍!? 魔力カボチャの秘密
「……本当に三倍になってる。」
ヨイは畑の前で、巨大化したマギカボを見つめていた。
昨日まで親指ほどだった。
それが今では、両手で抱えなければ持ち上げられないほどの大きさになっている。
「すごい……。」
ココが目を輝かせる。
「昨日のお昼は、これくらいでしたよね?」
両手で小さな丸を作る。
「それが一晩で……。」
「三倍。」
パンプが得意げに答える。
「三倍!」
「なんでパンプが誇らしそうなのよ。」
ルミナが呆れたように言う。
「だってマギカボだもん!」
「育てたのはヨイでしょう?」
「社長が育てたから、ぼくの仲間!」
「いつの間に。」
ヨイは苦笑した。
けれど、心の中では別のことを考えていた。
(魔力を与えたら、一気に成長した。)
(でも……。)
ヨイはマギカボへ手を触れる。
昨日とは違う。
今度は、はっきりと感覚が伝わってきた。
(もっと。)
(もっと大きくなりたい。)
「……。」
ヨイは手を離す。
「どうした?」
アルが尋ねる。
「このカボチャ。」
「魔力を欲しがってる。」
ルミナが驚いた。
「植物が?」
「うん。」
「じゃあ、もっと魔力をあげれば……。」
パンプが目を輝かせる。
「もっと大きくなる?」
「たぶん。」
「やってみよう!」
「待って。」
ルミナが慌てて止める。
「一晩で三倍よ?」
「これ以上やったら、どうなるか分からないわ。」
「確かに。」
ヨイは腕を組んだ。
「じゃあ、実験しよう。」
「実験?」
「魔力を一気に与えるんじゃなくて、少しずつ。」
ヨイは畑の隣に小さな区画を作った。
そこへ十個のカボチャの種を植える。
「まずは普通に育てる。」
一つ目。
「これは魔力なし。」
二つ目。
「これは少しだけ。」
三つ目。
「これは昨日と同じくらい。」
そして四つ目以降は、少しずつ魔力を増やしていく。
「これなら、どのくらい魔力を与えると、どんな成長になるのか分かる。」
ルミナは感心したように頷く。
「ちゃんと研究するのね。」
「能力だって使い方を間違えたら危ないからな。」
ヨイは笑った。
「特に、俺はハロウィンの街を作るんだから。」
「安全第一だ。」
アルが小さく頷く。
「その考え方は正しい。」
パンプは種を植えながら首をかしげる。
「でも、カボチャってそんなにいっぱい必要なの?」
「必要。」
ヨイは即答した。
「ジャック・オー・ランタン。」
「お化け屋敷。」
「カボチャ料理。」
「飾り。」
「全部カボチャを使う。」
「なるほど!」
パンプは嬉しそうに種を植える。
「じゃあ、いっぱい作らないと!」
「そういうこと。」
その日の夕方。
小さな実験畑には、十本の芽が並んでいた。
「よし。」
ヨイは一つ目の芽に手を添える。
「これは魔力なし。」
次。
「これは少し。」
そして三つ目。
「これも少し。」
最後に、十個目。
「これは……。」
ヨイは少し迷った。
「昨日より、ほんの少しだけ多く。」
魔力を流す。
淡い光が葉を包む。
「……。」
しばらく何も起きない。
「失敗?」
パンプが顔を近づける。
その瞬間。
ぽん。
葉が一枚増えた。
「おお!」
ぽん。
さらに一枚。
「増えた!」
つるが伸びる。
ゆっくり。
けれど確実に。
「成功だ。」
ヨイは笑った。
「魔力の量によって、成長速度が変わる。」
ルミナは手帳へ記録する。
「魔力なし。」
「通常。」
「少量。」
「中量……。」
「これなら、計画的に育てられるわね。」
「うん。」
ヨイは畑を見渡した。
小さな芽。
小さな畑。
まだ何もない。
それでも――。
この場所が少しずつ変わっていくのを感じる。
「ハロウィンまで、あと……。」
ルミナが予定表を見る。
「三週間。」
「三週間か。」
ヨイは空を見上げた。
「間に合うかな?」
「普通のカボチャなら無理ね。」
「でも……。」
ルミナは畑を見る。
「あなたの力なら、もしかしたら。」
ヨイは笑った。
「じゃあ、やってみよう。」
「三週間で。」
「この街を、最高のハロウィンの街にする。」
パンプが拳を突き上げる。
「おー!」
ココも続く。
「おー!」
アルも小さく拳を上げた。
「……おー。」
「アルさん、やる気あります?」
「ある。」
その日の夜。
実験畑では、それぞれのカボチャが少しずつ成長していた。
魔力を与えなかったカボチャ。
少しだけ与えたカボチャ。
そして、最も多く魔力を与えたカボチャ。
それぞれに明確な違いが生まれ始めていた。
だが――。
ヨイたちはまだ気づいていなかった。
魔力を与えられたカボチャが、ただ大きくなるだけではないことを。
翌朝。
「社長……。」
ココが震える声で呼んだ。
「どうした?」
「これ……。」
ヨイが畑を見る。
そこには――。
昨日まで普通の緑色だったカボチャの葉が、淡い紫色に変わっていた。
そして実の表面には、小さな光る模様が浮かんでいる。
「魔力を吸収して、性質そのものが変わり始めてる……?」
ヨイは驚きながら、そのカボチャへ手を伸ばした。
すると。
ぽわっ。
カボチャが嬉しそうに光った。
「……面白い。」
ヨイの口元に笑みが浮かぶ。
「これなら。」
ハロウィンは、もっと面白くできる。
しかしその頃。
棚の上に置かれていた黒い種が――。
また一度だけ。
小さく震えた。




