第19話 初めてのイベント依頼! 村の収穫祭をプロデュース!
「収穫祭を手伝ってほしい?」
ヨイは目を輝かせた。
「はい。」
荷馬車を引いてきた男性は深々と頭を下げる。
「私はリンデル村の村長をしております、ガインです。」
「先日は倒木を片付けていただき、本当に助かりました。」
「そんな、大したことじゃありませんよ。」
ヨイが笑うと、ガインも安心したように微笑んだ。
「ですが、そのお礼だけではありません。」
「実は村の収穫祭が近いのです。」
「毎年開いている祭りなんですが……。」
そこまで話すと、ガインは困ったように肩を落とした。
「年々、人が減っていまして。」
「若者は王都へ出てしまい、祭りも昔ほど賑わわなくなりました。」
「今年は中止にしようという話まで出ています。」
パンプが思わず声を上げる。
「お祭りがなくなるの?」
「うん……。」
ココもしょんぼりとうつむいた。
「寂しいですね。」
ヨイは腕を組み、少しだけ考え込む。
祭りは、人を笑顔にするものだ。
なくしてしまうのは簡単だが、一度消えた祭りを復活させるのは難しい。
「村長さん。」
「はい。」
「予算はありますか?」
ガインは苦笑した。
「正直に言えば、ほとんどありません。」
「飾りも新しく買えませんし、屋台も数えるほどです。」
「なるほど。」
ヨイはにやりと笑った。
「だったら、お金を使わずに面白くしましょう。」
「え?」
「祭りに必要なのは豪華さじゃない。」
「参加した人が笑顔になれることです。」
ルミナがすぐに手帳を開く。
「具体的には?」
ヨイは地面に枝で円を描きながら話し始めた。
「まず入口。」
「ここに大きなアーチを作る。」
「木の枝とツルだけで十分。」
「次に屋台。」
「料理だけじゃなく、遊びも作る。」
「遊び?」
パンプが身を乗り出す。
「例えば?」
「カボチャ転がし大会。」
「輪投げ。」
「宝探し。」
「子どもが夢中になるゲームを増やす。」
「おおー!」
パンプは目を輝かせた。
「楽しそう!」
「それから。」
ヨイは続ける。
「ステージを作る。」
「歌や踊りができる場所。」
「村のみんなにも参加してもらう。」
ガインは驚いた表情になる。
「そんな発想はありませんでした。」
「お祭りは見るものじゃない。」
「一緒に作るものですよ。」
その一言に、その場にいた全員が静かになった。
アルがふっと笑う。
「なるほど。」
「だから、この街のみんなは楽しそうなのか。」
ヨイは少し照れくさそうに笑った。
「前世で好きだったんです。」
「文化祭とか、お化け屋敷とか。」
「準備している時間も楽しくて。」
ルミナは心の中で思う。
(だからなんだ。)
この人は完成したイベントだけじゃなく、準備の時間さえ楽しんでいる。
だから仲間も自然と笑顔になる。
ガインはゆっくりと頭を下げた。
「お願いします。」
「どうか村を助けてください。」
ヨイは迷わず右手を差し出した。
「任せてください。」
「最高の収穫祭にしましょう。」
二人は固く握手を交わした。
その瞬間だった。
畑の方から、パンプの大きな声が聞こえてくる。
「社長ー!」
「カボチャ!」
「カボチャがすごい!」
「え?」
全員が畑へ駆け出した。
昨日まで地面を這うように伸びていたツルが、一晩でさらに大きく広がっている。
葉はヨイの手のひらほどの大きさになり、鮮やかな緑色に輝いていた。
「昨日より大きい……。」
ルミナは目を丸くする。
「普通なら十日くらいの成長よ。」
ヨイはしゃがみ込み、葉へそっと触れた。
すると――
(もう少し。)
(もう少し魔力が欲しい。)
昨日よりもはっきりと、植物の気持ちが伝わってくる。
ヨイは驚きながらも優しく微笑んだ。
「分かった。」
「でも焦らなくていい。」
「一緒に育っていこう。」
その言葉に応えるように、葉っぱが風に揺れる。
誰にも聞こえない、小さな喜びの声を上げるように。
その様子を見ていたエレノアは、小さくつぶやいた。
「植物と心を通わせる……。」
「やはり、ヨイ様は普通の人ではありませんね。」
ヨイ本人は、まだその力の本当の意味を知らない。
しかし、その能力は少しずつ目覚め始めていた。
そして、それはやがて「ハロウィンの奇跡」を生み出す大きな力へとつながっていくのだった。




