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異世界転生したら学園となりのゴーストタウンでした~怖がらない俺がハロウィンの街を作ったら世界一の観光地になりました~  作者: eccen.
第1章 出会いと開拓

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第1話 ゴーストタウンへようこそ

「……ここが、俺の領地?」


思わず笑ってしまった。


目の前に広がるのは、黒い霧。


崩れかけた石畳。


ツタに覆われた屋敷。


墓地。


そして、昼間だというのに薄暗い森。


遠くでは――


「ひゅうううう……」


風に混じって、いかにも幽霊らしい声が聞こえてくる。


普通なら悲鳴を上げる光景だ。


だが。


「最高じゃん!!」


俺は両手を広げて叫んだ。


「お化け屋敷そのものじゃないか!」


案内役の老人は、ぎょっと目を見開く。


「……え?」


「この廃墟! この霧! この雰囲気! しかも本物のゴースト付き!」


俺は興奮で息が荒くなる。


「セット代ゼロ! キャスト代ゼロ! 立地は学園のすぐ隣! これ、神物件だろ!」


老人は青ざめた。


「……キャ、キャスト?」


「もちろん!」


俺は満面の笑みだった。


「最高のハロウィンテーマパークが作れる!」


老人は完全に固まった。


「坊ちゃん……」


「はい?」


「今まで何十人も、この領地に送り込まれました。」


「へえ。」


「全員、一日で逃げました。」


「もったいない。」


「え?」


「こんな最高の場所を?」


老人は震え始める。


「あなた様は……本当に変わったお方ですな……」


俺は笑った。


前世。


神楽坂宵。


高校二年生。


趣味は、お化け屋敷巡り。


文化祭では毎年お化け屋敷を企画し、リアル脱出ゲームを作り、ホラーイベントを開催していた。


将来の夢はイベントプロデューサー。


そんな俺は事故で命を落とし――


気づけば、この異世界で貴族の息子「ヨイ・フォースター」として転生していた。


しかし。


父から与えられた領地は。


「呪われたゴーストタウン」。


誰も近寄らない。


住民ゼロ。


商人ゼロ。


騎士も嫌がる。


完全なるハズレ領地。


……らしい。


俺から見れば、大当たりだけど。


「よし!」


俺は拳を握る。


「今日からここを世界一楽しい街にする!」


その瞬間だった。


ひゅるり……


白い影が目の前を横切る。


老人が悲鳴を上げる。


「で、出たぁぁぁぁ!!」


半透明の幽霊。


シーツを被ったような丸っこい姿。


ぷかぷか浮いている。


「うらめしやぁ……」


「かわいい。」


「…………え?」


幽霊が止まった。


「かわいい。」


「…………」


「ちょっと待って。」


俺は幽霊をじっと見る。


「その登場のタイミング、いいね。」


「へ?」


「でもね。」


俺は真剣な顔になる。


「もっとこう……木の陰からゆっくり出てきた方が怖い。」


幽霊は目をぱちくりさせた。


「え?」


「あと、照明が欲しい。」


「しょうめい?」


「逆光!」


「ぎゃっこう?」


「霧ももっと濃く!」


幽霊は混乱していた。


老人も混乱していた。


「な、何を言っておるのです……」


「演出だよ。」


俺は当然のように答える。


「驚かせるなら、徹底的に。」


幽霊は少し考え……


「……もう一回やる?」


「もちろん!」


俺は親指を立てた。


「テイク2!」


幽霊は木の陰へ戻っていく。


数秒後。


さあ……


ざわ……


木々が揺れる。


霧が流れる。


「うらめしやぁぁぁ……」


さっきより、ずっとゆっくり現れる。


俺は拍手した。


「いい!」


幽霊は目を輝かせる。


「ほんと!?」


「今のすごく良かった!」


「えへへ。」


照れて笑う幽霊。


全然怖くない。


かわいい。


その時。


茂みがガサガサと揺れた。


ころん。


小さなカボチャが転がってくる。


……いや。


カボチャじゃない。


頭がカボチャの小さな魔物だった。


「!」


目が合った瞬間。


ダッシュで逃げる。


「待って!」


俺も追いかける。


「君、パンプキンヘッド!?」


「きゃー!」


「かわいい!」


「ひぇぇぇ!」


「待ってって!」


逃げる。


追う。


逃げる。


追う。


数分後。


息を切らしたカボチャ頭の少年は、木の陰に隠れながらこちらを見た。


「……た、食べない?」


「食べないよ!」


「……ほんと?」


「スカウトしたい。」


「すかうと?」


「うん。」


俺は笑顔で手を差し出した。


「一緒にハロウィンの街を作らない?」


パンプキンヘッドは首をかしげる。


「……はろうぃん?」


「世界一楽しいお祭り。」


「……お祭り?」


「みんなが笑って。」


「うん。」


「仮装して。」


「うん。」


「お菓子を食べて。」


「お菓子!」


「君たちが主役になるイベント。」


パンプキンヘッドの目が、きらきらと輝いた。


「ぼくが……主役?」


「もちろん。」


「……ほんと?」


「約束する。」


しばらく沈黙。


そして。


小さな手が、そっと俺の手を握った。


「ぼく、パンプ。」


「よろしく、パンプ。」


握手を交わした、その瞬間。


森のあちこちから、いくつもの視線を感じた。


木の陰。


墓石の裏。


古い屋敷の窓。


たくさんのゴーストやモンスターたちが、不思議そうにこちらを見つめている。


誰も知らなかった。


この日、小さな握手から始まることを。


やがて世界中の人々が訪れる――


"世界一楽しいハロウィンの街"の伝説が、静かに幕を開けた。

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