第14話 迷子救出! ゴーストたちの大捜索
「それじゃあ、作戦開始!」
ヨイが手を叩くと、仲間たちが一斉に集まった。
「まずは情報整理!」
ルミナが手帳を開く。
「ミアちゃん、お母さんとはどこではぐれたの?」
「森の赤い花がいっぱい咲いてるところ。」
「赤い花……。」
アルが腕を組む。
「あの辺りなら、夕方になると霧が出る。」
「迷いやすい場所だな。」
ヨイは地面に枝で地図を描き始めた。
「ここが街。」
「ここが森。」
「ここが赤い花畑。」
パンプが地図を覗き込む。
「広い!」
「だから手分けする。」
ヨイは仲間たちを見回した。
「パンプ。」
「はい!」
「木の上から周りを見て。」
「任せて!」
「アルさん。」
「空から探す。」
「了解。」
「ココは街の入口で待機。」
「もしお母さんが来たら案内して。」
「はい!」
「ルミナ。」
「私は?」
「ミアちゃんと一緒にいてあげて。」
ルミナは優しく微笑んだ。
「もちろん。」
「社長は?」
パンプが尋ねる。
ヨイはにっと笑う。
「俺は森の中を探す。」
「じゃあ行こう!」
パンプはカボチャ頭をかぶり直し、ぴょんっと木へ飛び乗る。
「うわっ!」
ミアは目を丸くした。
「すごい……。」
「ぼく、高いところ得意!」
枝から枝へ飛び移りながら、パンプは森の奥へ消えていく。
アルは黒い翼を広げた。
ふわり、と静かに空へ舞い上がる。
「見つけたらすぐ知らせる。」
「お願いします!」
ヨイも森へ足を踏み入れた。
木漏れ日が地面に揺れる。
鳥のさえずり。
風に揺れる葉の音。
そして――。
(……誰かいる。)
不思議な感覚が胸をよぎる。
最近、この森を歩いていると、土地の様子がなんとなく分かるようになってきた。
足元の草。
木々の根。
流れる水。
すべてが小さく語りかけてくる。
(あっちだ。)
ヨイは迷わず右へ進んだ。
しばらく歩くと、小さな泣き声が聞こえる。
「うぅ……ミア……。」
茂みの向こうで、一人の女性が座り込んでいた。
服は枝に引っかかり、足には泥がついている。
「大丈夫ですか!」
ヨイが駆け寄る。
女性は顔を上げ、驚いた。
「あ……あなたは?」
「ゴーストタウンの者です。」
その言葉を聞いた瞬間、女性の表情が凍りつく。
「ゴーストタウン……。」
「お願いです!」
ヨイは急いで続けた。
「娘さんのミアちゃんは無事です!」
「えっ!」
女性は勢いよく立ち上がった。
「ミアが!?」
「はい。」
「街で保護しています。」
その瞬間。
女性の目から涙があふれた。
「よかった……。」
膝から力が抜け、その場に座り込んでしまう。
ヨイは慌てて支えた。
「落ち着いてください。」
「ありがとうございます……。」
「でも。」
女性は不思議そうな顔をする。
「どうしてゴーストタウンの人が……。」
ヨイは笑った。
「迷子を助けるのに、理由なんていりません。」
女性は目を丸くした。
「帰りましょう。」
「みんな待っています。」
女性は何度もうなずいた。
その頃、街では――。
「ミアちゃん。」
ルミナがお茶を差し出す。
「ありがとう。」
ココは一生懸命、リンゴをきれいに磨いていた。
「お腹すいてない?」
「ちょっと。」
「じゃあ半分こ。」
ココはリンゴを二つに切り、ミアへ差し出した。
「甘いですよ。」
「いただきます。」
シャクッ。
一口食べると、ミアの顔がぱっと明るくなる。
「おいしい!」
「よかった。」
パンプも木の上から戻ってきた。
「社長まだかなぁ。」
その時だった。
「ミア!」
遠くから女性の声が響く。
「お母さん!」
ミアは勢いよく駆け出した。
女性も涙を流しながら娘を抱きしめる。
「ごめんね……!」
「ううん!」
「怖かったね。」
「でもね!」
ミアは嬉しそうに振り返った。
「みんなが助けてくれた!」
女性はヨイたちへ深く頭を下げた。
「本当にありがとうございました。」
「当然のことをしただけですよ。」
ヨイは照れくさそうに笑う。
女性は街を見渡した。
楽しそうに笑うパンプ。
照れながら手を振るココ。
優雅に一礼するアル。
そして少し誇らしそうなルミナ。
「……噂とは、まったく違う街ですね。」
その一言に、仲間たちは顔を見合わせる。
ヨイは笑顔で答えた。
「これからもっと、みんなが笑顔になれる街にします。」
女性は微笑み、かごの中から赤いリンゴをいくつか取り出した。
「お礼です。」
「受け取ってください。」
ヨイは一度断ろうとしたが、パンプのお腹が「ぐぅ」と鳴った。
みんなが思わず笑う。
「それじゃあ、ありがたくいただきます。」
「はい。」
夕暮れのゴーストタウンには、温かな笑い声が響いていた。
その様子を街道の向こうから見ていた旅人が、小さくつぶやく。
「……あそこが、本当に呪われた街なのか?」
新しい噂は、ゆっくりと王都へ向かって歩き始めていた。




