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93.マオの計画

93.マオの計画


初仕事を未達成で終えた次の日以降、依頼が舞いこむことはなかった。


だが、働かざる者食うべからず。仕事もせずにかまどで世話になるわけにはいかない。

ヤモとマオは薬草採取の依頼をこなしつつ、かまどで営業の手伝いをしながら過ごし、三日目を迎えていた。


その三日目の夜のことだ。


午前中はギルドで依頼を受けて薬草採取、午後からはかまどでの給仕や買い出しの手伝いと夕食を終えたヤモとマオは自室で休むことになった。


マオが使っている小さくてかわいらしいベッドは、ヤモのベッドの隣に並んでいる。


ヤモとマオがプリシラからの依頼で奔走している間に、マクリール夫妻がマオのベッドを買ってきてくれたのだ。


仕込みを終えたマクリール夫妻が二階の部屋に上り、キッチンかまどには寝静まる時間が訪れた。


みんなが眠りについてから深夜二時頃。


ヤモは目を覚ました。

いや、正確には眠っておらず確信を持って目を開けたのだ。


隣のベッドに視線を向けたヤモは、微かなため息を漏らした。

「そうなったか…」

思ったとおりだ。


隣のベッドにマオの姿はない。


赤いポンチョもキャメル色のリュックも見当たらなかった。

すぐに起き上がったヤモは、自室のドアを静かに開ける。


そこには予想通りの光景がヤモを待っていた。


淡い光を灯したマジックランタンが照らし出す仄暗い廊下に、赤い三角耳のポンチョとキャメル色のリュックがひときわ濃く浮かび上がっている。


ヤモは口を開き静かな口調でその名を呼んだ。


「――マオ」

「ぴっ」

そろそろと廊下を進んでいたマオの後ろ姿が、小さな声を上げ、びくっと飛び上がり足を止めた。


驚いたからか尻尾はいつもの倍の大きさにボワッと膨らんでいる。


おずおずとしながらも、意を決したようにマオはゆっくりと身体を振り向かせた。


「ヤモおねえちゃん…」

オッドアイの双眸はヤモを見上げたが、すぐに後ろめた気に下を向く。

「ヤモおねえちゃん、ごめんなさい…。マオはわるいこです…」

小さな両手を胸の前でもじもじさせながらマオは俯いたま言った。


ヤモはマオ前に歩み寄り、膝をつく。

「マオ、私は怒ってはいないよ。ただ、理由を聞かせてほしいだけだ」

ヤモの問いかけにマオは驚いたように顔を上げ、双眸をまん丸くしてヤモを見上げた。


しょんぼりとしたマオは、てっきり大目玉を食らうと思っていたようだ。


どうして、マオが深夜に出かけようとしたしたのか、理由はすでに予想がついていた。


ーーそれは前日に遡る。


マオの計画を悟ることが出来たきっかけはマクリール夫妻からの相談だった。




『マオちゃんから地図を貸してほしいって言われたのよ。あと、ラミア洞窟がある場所はどこですかって…』

『ラミア洞窟っていえば、あそこは禁足地だよな?マオちゃんがどうしてそんな場所を知りたいのか心配でよ…!』


マクリール夫妻からの相談を受けたヤモは、前日からマオの動向を気にかけていたのである。


まさかと思い、直接聞かずにいたがヤモの思いに反してマオは行動に移した。


問い詰めればマオは理由を言うだろう。


しかし、それはマオを萎縮させて無理やりに聞き出すようなものだ。

ヤモはしっかりとマオと膝を突き合わせ、理由を聞いた上で話し合いたい。


ヤモはマオの指導教育者と護衛である前に、相棒なのだから。


マオと話し合うために、ヤモは一緒に自室に戻った。

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