92.帰途
92.帰途
プリシラたちへの報告を終えたヤモとマオは、ギルドでフレデリカと別れて帰途に着いていた。
うららかに晴れ渡る空はヤモとマオの心境とは真逆の色で染め上げられている。
依頼を未達成でありながら、プリシラは報酬を支払おうとしたがヤモとマオは断った。
己の不甲斐なさを謝罪するヤモとマオに対して、プリシラとバートン夫妻は責めるどころか、優しく労ってくれたのだ。
今回、プリシラがギルドに依頼をしたことを表沙汰にはしない配慮が検討されようとしたが、これをプリシラとバートン夫妻は固辞。
すべてを包み隠さずに話し、王都警備隊と裁判での証言にも応じるというのがバートン親子からの強い要望である。
ニックの死については彼の母親、マーサ・ヨハンソンに、フレデリカとジョセフが今日にでも王都を出立して伝えに行くこということになった。
実際に罪に問われるのはガビたち三人組と亡くなってはいるがニックの四人。
ニックは故人になっているため、書類上に裁きを受けたことが明記される形となる。
やはり、亡くなっていようとも、禁足地に侵入した罪は避けられないとのことだった。
残ったのは、苦い後味と払いようのないモヤモヤとした思い。
歩きながら、ヤモは肩にちょこんと乗っているマオに視線を向ける。
マオはうつむき加減で物思いにふけるようにして、じっと下を見ていた。
透明感のある美しい双眸は、ヤモには分からない何かを映しているかのようだ。
「マオ?」
「…はい!ヤモおねえちゃん!」
やはり何か考え事していたのか、マオは一拍遅れて顔を上げる。
「昼食、何か食べて帰るか?」
「おひるごはん…」
マオは思い出したように腹に手を当てながら呟く。
「何か食べたいものはあるか?マオの行きたい店に行こう」
「マオ、あさごはんをたべたから、おひるごはんちょっとだけたべたいです」
「確かに、私もまだ小腹が空いたくらいだな。よし、軽いものを食べに行くか。何が食べたい?」
ヤモも自分の空腹具合を確認して頷いた。マオの言う通り、朝食をしっかり食べたため空腹とまではいっていない。
「マオ、メイプルビーバーテイルがたべたいです」
「ビーバーテイルか、分かった。人気の屋台があるからそこに行こう。そうだ、プーティンも買って、二人で半分こにしようか」
「はい、ヤモおねえちゃん!マオ、プーティンもだいすきです!」
ビーバーテイルは平たい揚げパンに果物や甘いソースをトッピングしたおやつパン、プーティンはフライドポテトにチーズとグレイビーソースをかけた軽食のことである。
どちらもカルディア王国ではポピュラーな名物料理だ。
昼食を決めたヤモとマオは、様々な屋台が営業している中央広場へ向けて歩き出した。




