91.後悔
91.後悔
声の主は、ジョセフだった。
ジョセフは頭を抱えたまま悔恨を絞り出すように続ける。
「私が殺したようなものだ…感情のままに解雇をしなければ、ニックは無謀なことなどしなかった…私は、私は…何てことをしてしまったんだ…」
初対面での剣呑さや威圧感は微塵もない。震える声は弱々しく脆さを帯びている。
「お父様…」
「あなた…」
プリシラは涙で濡れた顔を上げ、セレナは夫の肩に手を置き慰めるようにさすった。
ニックの死はプリシラ達のせいではない。プリシラ達の中の誰か一人を責めるのは断じて違う。
「すまなかった、プリシラ…」
「違います、お父様!お父様のせいではありません!」
「あなた、ご自分を責めるのはおやめになって!」
声を振り絞るように詫びるジョセフにプリシラは泣きながら首を振り、セレナは強く夫を抱きしめた。
バートン親子は互いを庇い合うようにして身を寄せ合う。
そこには、当初の確執や溝などはない。あるのは互いを想い合う深い愛情だけだ。
バートン親子にどんな言葉をかければいいのか、どんな言葉をかければバートン親子の心を守れるのか、ヤモたちには分からなかった。
いや、ただ一つ守れる方法をヤモたちはちゃんと分かっている。
――ニックを連れ帰ること。
それがバートン家族の心を救う、唯一の方法であり、本来ならばヤモとマオがしなければいけないことだった。




