90.かなわなかった願いと約束
90.かなわなかった願いと約束
「どうして…」
フレデリカが話しを区切ったあたりで、ぽつりと呟いたのはプリシラだった。
顔色は蒼白さを通り越して、蝋のように白い。
みるみるうちにプリシラの双瞳から涙が溢れ出し、幾筋も頬を滑り落ちていく。
震える娘の華奢な肩をセレナが支えるように抱きしめた。
ジョセフは眉間に皺を寄せて固く目を閉じ、強張った表情で俯いている。
「ニックは…どうして…禁足地なんかに…」
「それは…」
「フレデリカ…」
プリシラの問いかけに答えようとしたフレデリカをヤモは首を振って止めた。
フレデリカばかりに丸投げをして責任を負わせるわけにはいかない。
ヤモとマオは視線を合わせて頷き合う。
プリシラはヤモとマオの大切な依頼人。
責任を負うのは依頼を果たせなかったヤモとマオなのだ。
「プリシラ様。それは、私とマオからお話しさせていただきます」
「ニックさんは、おもかげいしをとりにラミアどうくつにいったんです」
「面影石…?」
怪訝な顔をするプリシラにヤモとマオは頷いた。
「面影石は、最初に手に取った者が思い願った色に変化する宝石のことです。ニックさんが、面影石を使って指輪とブレスレットを作ろうとしていたという証言を得られました」
「ニックが…指輪とブレスレットを…?」
「プリシラさまとあかちゃんへのプレゼントです」
「ニック、わたくしとこの子ののために……っ」
再び、プリシラの双瞳から涙がとめどもなく溢れ流れ唇からは嗚咽が漏れる。
セレナに抱きしめられながらプリシラは泣きじゃくった。
「わたくしの…わたくしのせいだわ…」
「プリシラ、落ち着きなさい。あなたのせいではないわ…!」
「でも、お母様…わたくしがいなければ…ニックは…っ…わたくしのせいで…」
プリシラは頭を振りながら、言葉を刃に変えて己へと突き刺すように繰り返す。
自身の存在がニックを死に追いやったと考えてしまっているのだ。
プリシラには一切の非もなければ責められいわれもないのに。
「プリシラさま…!」
「私の責任だ」
プリシラに声をかけようとしたマオを静かでありながら悲痛な声が遮った。




