9.指導教育と護衛?
9.指導教育と護衛?
「君には、初級冒険者への指導教育と護衛をしてもらいたい」
「初級冒険者への指導教育と…護衛?」
ヤモはポカンとして繰り返した。
初級冒険者の依頼任務に上級冒険者が同行し、指導教育の際に安全確保を担うことは良くあることだ。しかし、護衛という言葉は安全確保とは異なる意味を持つ。
フレデリカが言っているのは、指導教育や依頼任務での安全確保は勿論のこと、件の初級冒険者を絶対に確実に護らなければならないということだ。
眉間に皺を寄せ珍妙な顔になっているヤモに、フレデリカは苦笑を漏らした。
「まあ、会ってもらった方が早いかな。リーシャ、入ってもらってくれ」
「かしこまりました。皆さん、お入りください」
リーシャがドアを開けて、外に向かって声をかける。
入ってきたのは見知った四人の人物と…見知らぬ、一匹。
一人目は、にこやかに微笑む美麗な少年。
キラキラした蜂蜜色の髪は絹のようにサラサラ。アーモンド型の瞳は綺麗な飴色。
すらりとした長身には濃紺色の丈長ジャケットとグレーのトラウザーズを身に着けている。
少年の名はリィン・レオンハルト。上級冒険者パーティー・クレイドルのリーダーだ。
彼に続いて入ってきたのはクレイドルメンバー・蘭丸。
刈り上げた臙脂色の髪とやや垂れた濃い橙色の瞳。彫りの深い顔と頑丈な顎。
額に生えた短い角と朱色を帯びたペールオレンジ肌から、蘭丸がオーガ族と見て取れる。
ネイビーのスリーブレスシャツとカーキ色のサルエルパンツが筋骨隆々な体格によく似合う。
三人目は、恐ろしく妖艶な美女。クレイドルメンバーの葛の葉だ。
艷やかに流れるぬばたまの黒髪。長いまつ毛に縁取られた黒スグリの瞳。
ふっくらとした紅色の唇は、濡れたような艶を帯びており目が眩むほどに蠱惑的だ。
七宝柄の着物からは柔らかな線を描く肩と足がはだけ、すべるような白肌があらわになっている。
最後に続いて入ってきたのは絶世の美少女。人目を引く可憐な顔に桃色の唇と白磁の肌。
もう一つ特徴的なのは髪の色と瞳の色だ。ハーフアップにされた髪はプラチナブロンド、瞳は虹色を落とし込んだアースアイ。
白い長袖ブラウスと胸元には緑色のリボンタイ、同色の膝上までのスカートと白いロングブーツを身に着けている。
華奢な両肩に羽織っているのは、緑色のローブ。
ローブには、金糸で草木を連想させる刺繍が縫い込まれている。
彼女の名はシエル。小柄で儚げな見た目だが、シエルはこの場にいる誰よりも年上だ。いや、年上という範疇ではおさまらない。
シエルは千年以上生きているハイエルフだ。ヤモなど未熟者扱いされる立場である。




