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85.ニックの最期

85.ニックの最期


「ア、アニキの言う通りっす!」

「ニックは魔物が近付いているのに、逃げようとしなかったんでやんす!」

「逃げようとしなかった…?」

「どうしてですか…?」

ヤモとマオは目を丸くして聞き返した。


ニックはなぜ逃げようとしなかったのか。


魔物から逃げないのは自殺行為も同然だ。

魔物を目の前にして恐怖に足がすくんで逃げられなかったのだろうか。


「なぜ、逃げなかったんだ…?」


ヤモの疑問に答えられる者は誰もいない。

答えられる人物はただ一人。


ニック・ヨハンソンだけだ。


この疑問はニック当人に聞かなければ答えが分からないものだった。


「ニックがどうなったのか見たのか?」

「お、俺は先頭で逃げていたから…その、ニックがどうなったかまでは…見ていないです…」

ゴニョゴニョと言い淀みながらガビはヤモの視線から逃げるように項垂れる。

ギドも同様だ。バツが悪そうに身体をモゾモゾと動かしていた。


「…あのぉ」


そんな中、おずおずと呟くように声を発したのは、ゴズだった。


「チラッとですけど、見やした…」

恐怖を思い出したのか、ゴズはゴクリと唾を飲み込んでから続ける。

「ニックの、足だけ見やした…多分、魔物に喰われている途中だったかもしれやせん…」

「それは、確かなんだな?」

「へ、へい!間違いありやせん!」

怯えた表情ながらもゴズは強く頷く。


ゴズの証言は、残酷かつ明確にニックの死を意味していた。


最も避けたく恐れていた事態だ。


ぐすっぐすっと、マオが鼻をすする涙声がヤモの耳に届いた。


視線を向けなくてもマオが涙を拭っているのが肩から伝わってくる。


「なぜ、洞窟から出た後に助けを呼ばなかった?」


こんな質問が意味をなさないことは理解していたが、ヤモは口に出さずにいられなかった。

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