84.救出不可能
84.救出不可能
「オルフェス隊長。人命救助であっても、ニックを救出にはいけないのでしょうか…」
ダメもとで聞くヤモに、オルフェスは苦渋の表情で首を横に振った。
返答は否。当然だ。
「禁足地に立ち入るということは、多大なリスクを伴う覚悟しなければいけないことなんだ…ヤモ君、君もよく分かっているはずだよ…」
「ええ…そうですね…よく、分かっています…」
非情ではあるが法に照らせば、禁足地に自ら足を踏み入れたニックの生死を問わず彼自身の自己責任ということになってしまう。
「…マオ。ラミア洞窟に行くことはできない。だが、ニックに何があったのかだけは依頼人にはきちんと伝えよう」
「はい…ヤモおねえちゃん」
マオは泣くのを堪えるような表情で小さく頷いた。
ヤモとてこんな酷なことをマオには言いたくはないが現状では依頼人への説明が、唯一の出来ることだった。
ヤモは乱れそうになる気持ちを落ち着かせて聴取を再開させる。
「…面影石を採りに行くために、なぜラミア洞窟を選んだのか、お前たちはニックから聞いているのか?」
「ラミア洞窟は、手付かずの鉱山洞窟だから、あそこなら面影石があるかもしれないって、ニックが言い張ったんですよ…」
「推測だけでラミア洞窟に向かったのか…」
ニックは相当に気負ってしまっていたのだろう。
愛するプリシラと生まれてくる子のためにプレゼントを用意したい、プリシラの父親・ジョセフに何としても認められたい。
だからこそ、禁足地に指定されている手付かずの鉱山洞窟ならば、面影石がふんだんに眠っていると解釈してしまったのだ。
だが、結果としてその無謀さは最悪の事態を引き起こしてしまっている。
やり切れない思いを携えながら、ヤモは質問を続行した。
「ニックとお前たちは、ラミア洞窟のどの地点まで行ったんだ?」
「さ、最奥までです…」
「最奥…?そんな場所まで到達出来たのか」
「は、はい…」
と、ここで言葉を止めたガビはブルッと身体を身震いさせた。
ごつい体躯は極限まで縮こまっている。
「で、で、何事もなく最奥に着いたら、目当ての面影石は、ほんの少し、それも小さい面影石しかなくて…」
「それからどうした」
「それから、しばらく探していたら、ニックが一つだけ、でかめの面影石を見つけたんです。その石をニックが採取して…ニックがその場で膝をついてじっとしているのを、離れて見ていたら…い、石壁が、きゅっ、急にっ…生き物みてえに、グニャって動き出して!」
ガビの声が恐怖に上ずり、ギドとゴズは身を寄せ合って震えだした。
「魔物がいたんだな?姿は見たのか?」
「お、おお、恐ろしくてっはっきりとは見てません!ただ…バカでかくて長い奴でした…!」
「魔物が出てきたなら、お前たちはなぜ逃げる時にニックに声をかけなかったんだ!」
「こ、声はかけましたよ!それに、ニックも魔物に気づいていたはずです!なあ、そうだよな!」
必死に言い募るガビは、隣に座るギドとゴズに同意を求めた。
胡乱げに目を細めるヤモの迫力に圧倒されつつも、ギドとゴズは首がもげんばかりに頷いた。




