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83.禁足地

83.禁足地


「ニックは、まだラミア洞窟に…!?お前たち、ニックを置き去りにしたのか!!」

「お、置き去りなんて人聞きの悪い!オ、オレたち三人が先に逃げただけで…置き去りにしたわけじゃ…」

「馬鹿どもが!それを、置き去りにしたと言うんだ!!」

ヤモは憤怒の形相でガビを怒鳴りつけた。


よりにもよって置き去りにされた場所がラミア洞窟とは!


「ヤモおねえちゃん?」

この場でマオだけが事態を呑みこめていなかった。

きょとんとした顔をして、言葉を失っているヤモを見つめている。


「ヤモおねえちゃん、ニックさんがいるところがわかったのですよね?」

マオにしてみれば喜ばしいことなのに、ちっとも嬉しそうじゃないヤモの様子が不思議なのだ。


確かに、ニックが向かった場所は判明した。


ただ、向かった場所が大問題なのである。

問題のラミア洞窟とは、セドナ地方の山間部にある鉱山洞窟のことだ。


ニックが採取に行った面影石とは珍しい石で、宝石と言うより魔宝石の一種だ。


珍しいと呼ばれるゆえんは面影石の特性にある。


面影石は最初に手に取った者が、思い願った色に変化する特性を持っているのだ。


(ニックが採りに行ったのは、面影石だったのか…!)


確かに、面影石は"特別な石"に部類されるかもしれない。

採取は出来るが、見つけられる確率がごくまれであるに加えて宝飾品に使用されることもない石だ。


それに、ヤモはラミア洞窟に面影石があるという話は聞いたことがなかった。


ーー加えて、ラミア洞窟には大きな問題がある。


「マオ、ラミア洞窟はな…禁足地なんだ」

「きんそくち…?」

「禁足地というのは入ってはいけない場所のことだ」


″カルディア王国法第二十条・いかなる理由があろうとも禁足地には立ち入りを禁ずる″


禁足地は、カルディア王国法によって立ち入りが厳しく禁じられている。


理由は場所によって様々だ。

歴史的な背景、宗教、伝承といったものが代表に上げられる。


ニックが向かったラミア洞窟は、伝承的禁足地。


伝承的禁足地とは正体不明の魔物が生息する禁足地のことを示す。


ラミア洞窟には姿形も強さも計り知れぬ魔物が生息しているということだ。


百年前、法で定められる前はラミア洞窟に挑む冒険者や調査隊もいた。


けれど、挑んだ冒険者たちも調査隊も誰も帰って来なかったのだ。

そして、彼らを救助に向かった者たちも同様に。


そのようなことが幾度も繰り返されたため、当時のカルディア国王と四大貴族当主、および冒険者ギルドが協議をした上でラミア洞窟を禁足地に制定したのである。


「ニックさんをたすけにいけないのですか…?」

マオの問いかけにヤモは何も答えられなかった。


口を噤んだヤモに代わって答えてくれたのはオルフェスだった。


「マオ君、残念だがたとえ冒険者でも依頼だとしてもラミア洞窟に入ることは許されないんだ。もしも強行するとなれば…俺は君たちを逮捕しなければならない…」

「そんな…」

マオは双眸を落胆に染め上げ、しゅんと耳と尻尾を下げてうつむく。

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