74.捜索再開の朝
74.捜索再開の朝
翌日。
ヤモはマオのもちもち体操の声で目が覚めた。
マオの声を聞きながら起きるようになってから、不思議なくらいに寝覚めが良い。
たゆたうまどろみに身を任せるような、それでいてすっきりとした心地よい目覚め。
以前であれば悪夢の欠片がヘドロのようにこびりついているのに、それが、もう一切ない。
ぐっすりと眠れたという感覚があるのだ。
眠るとは、こんなにも心地よいものだったのか。
「…快眠なんて、何年ぶりだ…」
ベッドから起き上がり時計を見ると、時刻は八時。
今までの六時起床のルーティンは崩れているが、しっかりと眠れたからか気分は爽快だ。
外からはマオの溌剌とした声が聞こえてきている。
ベッドから起き上がったヤモは、身支度を整えて一階へと下りた。
一階に下りると、厨房ではコンラッドがご機嫌な鼻歌交じりに朝食の準備に勤しんでいる。
火にかけられた鍋からは、コトコトとリズミカルな音が刻まれ、食欲を誘う香りが漂ってきていた。
サラダを作っていたコンラッドが顔を上げ、晴れやかな笑顔でヤモを迎える。
「おはようさん、ヤモ!」
「おはよう、コンラッド。マオはもちもち体操張り切ってるな」
「マオちゃん、もちもち体操のキレが上がってきているんだぜ!こりゃ、達人になるのももうすぐだな!」
コンラッドからマオへの惜しみない賛辞。
ヤモは、くすっと笑みをこぼしてしまった。
「コンラッド、親バカみたいになってるぞ」
「あったりまえよ!俺もジーナも、お前さんとマオちゃんのことに関してはいっくらでも親バカになるぜ!」
コンラッドは大真面目な顔で腕を組み、誇らしげに胸を張った。
「そ、そうなのか…」
胸の中にほわほわと暖かい感覚が広がる。ぬくい毛布に包まれているみたいだ。
嬉しいような照れくさいような気がして、ヤモは誤魔化すように頬をポリポリと掻いた。
もごもごと口ごもった姿を、コンラッドが微笑ましく見守っているのをヤモは気づいていない。
そうしていると、店の扉が開きもちもち体操を終えたマオと付き添いのジーナが戻ってきた。
「ヤモおねえちゃん!おはようございます!」
「ヤモ、おはよう!」
「おはよう。マオ、ジーナ。マオ、もちもち体操頑張ってるな」
「はい!マオは、もっともっとがんばります!」
「それじゃ、二人とも戻ってきたし朝飯にするか!じっくり煮こんだブイヤベースだからな、うまいぞー!」
キッチン・かまどに、楽しく賑やかな朝が始まった。




