73.打ち砕かれる期待
73.打ち砕かれる期待
「わぁ…おなじおかおがいっぱいになりました」
転写魔法を初めて見たのか、マオが感嘆の声をもらした。
目をキラキラさせているマオに、ヤモとリーシャは顔を見合わせて微笑んだ。
ヤモとマオは似顔絵を受け取ると、リーシャに礼を言ってから冒険者ギルドを後にした。
ーー外に出ると、空は夕暮れの色に染まりかけている。
悠長にしていたら、空には黒檀色の帷がおりてくるだろう。
「マオ、日が暮れる前に最後の聞きこみを急ごう。まずは、東門からだ」
「はい、ヤモおねえちゃん!もんでは、どんなおはなしをきくのですか?」
「四つの門から、ニックと三人組が出ていないかを聞くんだ。四つのうち、どこかの門から出ていれば四人の行き先が分かるからな」
ニックと三人組はいずれかの地方に行った可能性がある。
どこの門から出たかは、門兵が記憶しているかもし
れない。
期待が高まれば、自然と調査へのモチベーションも上がっていく。
ヤモとマオは足取りも軽く、すぐさま四つの門への聞きこみに取りかかった。
ーしかし。
「いやー、こんな四人組は見ていないし…通った記録もないな」
「うーん、ダメだな。記録にも載っていない」
「ここを通った記録はないし、俺達も記憶にはないな…」
「この門は通っていないぞ、別の門を通ったんじゃないのか?」
東西南北、四つすべての門兵からこの答えが返ってきた。
ヤモとマオも門兵からすべての通行者の記録簿を見せてもらったが、ニックの名前はどこにも載っていない。
粘るようにもう一度、写真と似顔絵を見せたが門兵たちは、困惑顔で首を横に振るだけだった。
ヤモとマオの期待を打ち砕き、糸口を断ち切るには十分なほどの返答。
四つの門での聞きこみを終えた頃には、すっかり日は暮れていた。
空の器は檀色の夜で満たされている。
「マオ、今日はひとまず帰ろう…」
「はい、ヤモおねえちゃん…」
言葉少なくとぼとぼと家路につく二人を、微笑むような三日月がささやかばかりの光で照らしていた。




