58.怒声
58.怒声
ヤモは安堵の息をついた。マオに任せてよかった。
マオの素直で真摯な言葉と想いがプリシラに届いたのだ。
プリシラの背後に控えるナターシャも浮かんだ涙を拭いながら安心したように微笑んでいる。
ヤモはマオの隣に膝をついて、手を差し伸べながらプリシラに語りかけた。
「精一杯、力を尽くします。あなたは、今はしっかり身体を休めてください。あなたのためにも、お腹の子のためにもです」
「マオさん…ヤモさん…ありがとう…ありがとうっ…どうか、よろしくお願いいたします…」
プリシラはヤモの手を取る。
ヤモはプリシラの華奢な身体を労りながら、床から立ち上がらせると椅子に座らせた。
すかさず、ナターシャが傍にあったブランケットをプリシラの背中にかける。
「そうよね、わたくしが元気でいなければ、ニックもこの子も困っちゃう」
涙の名残で目尻は赤いながらも、プリシラは曇りのない笑顔を見せてくれた。
最初に会った時よりも、プリシラの表情は明るくなっている気がする。
「マオさん、ヤモさん。改めて、ニックの捜索をよろしくお願いいたします」
「はい!マオたち、がんばります!」
こうして、マオとヤモは正式にプリシラからの依頼を引き受けて調査を開始することになった。
「それでは、明日から調査を始めさせていただきます。マオ、そろそろお暇しよう」
「はい、ヤモおねえちゃん!」
「マオさん、ヤモさん、今日は来てくれて本当にありがとう」
「私からも感謝申し上げます」
プリシラとナターシャが、感謝の言葉とともにマオとヤモに深く頭を下げる。
見送ると言ってくれたプリシラとともに、マオとヤモは部屋を退出ししようとした。
その時だ。
乱暴で重たい音とともに部屋のドアが開いた。
「これは、いったいどういうことだ!!」
部屋中に激情を隠さない怒声が響き渡る。
「ぴゃっ!」
マオが、びくっと全身を震わせた。
耳は後ろに下がり、尻尾は見たこともないくらいに毛がふくらんでいる。
ヤモやプリシラたちでも驚くのだ、マオが恐怖を感じるのも当たり前だ。
ヤモはマオとプリシラたちを庇うため、慌てて前へと進み出る。




