55.プリシラの依頼
55.プリシラの依頼
もてなされた食事は、プリシラが言った通りとびっきりのおいしさだった。
バートン家のコックは、コンラッドに引けをとらない腕前だ。
おいしい食事をいただき、食べ終えたところでヤモとマオは飲み物を飲んでで一息をつく。
タイミングを見計らったようにメイド二人が現れ、手際よく空になったティースタンドや皿を片付けていった。
飲み物も淹れ直されて、芳醇な香りが室内に漂う。
「ごちそうさまでした!プリシラさま、とてもおいしかったです!」
「食事まで用意していだだき感謝いたします」
「お気になさらないで、依頼を受けていただいたお礼です。もちろん、こちらとは別に報酬の方も必ずお支払いいたします」
プリシラはチャーミングな美貌にたおやかな微笑みを浮かべた。
プリシラはルイボスティーを一口飲んでカップを指で拭ってからテーブルに置く。
プリシラは一つ一つの所作が優雅で洗練されており、まるで絵画のモデルのようだ。
ヤモはマオに視線を送る。すると、ちょうどのタイミングでマオもヤモの方を見た。
ヤモが頷くと、マオはハッしてカップを置いた。合図を汲み取ってくれたようだ。
「プリシラさま、ごいらいについておはなしをきいてもいいですか?」
「ええ、お話させていただきます」
そうして、口を開いたプリシラは今回の依頼の内容を語り始めた。
長い睫毛が伏せられ、深い青色の瞳には悲愴な憂いが落ちる。
プリシラは一枚の写真を取り出すと、ヤモとマオに差し出した。
そこには、美しく手入れされた庭木を背にして一人の少年が写っていた。
癖のある短い赤毛に意志の強そうな青緑の瞳。そばかすが特徴的な快活そうな顔立ち。
写真の中の少年は、照れくさそうな微笑みを浮かべてこちらを見つめている。
「捜していただきたいのは、彼です。名前は、ニック・ヨハンソン。バートン家に住み込みで働いていた庭師見習いです。年は、私と同じ十七歳」
プリシラは目を閉じ、細く悲痛な吐息をもらした。震える睫毛は涙を堪えているようだ。
「ニックが…彼が行方不明になったのは最後に会いに来た三月十五日です。次に会いに来る時には見たこともないプレゼントを持ってくると…そう言い残したまま…」
「…次に会いに来る、とはニックさんは住み込みの庭師見習いでしたよね?」
「ニックは…わたくしの父に解雇されたんです。最後に会った時はすでに庭師見習いでもなくバートン家から出ています」
「おしごとをやめさせられたのですか」
それはなぜ?と、マオに次いで問いかけようとしたヤモは、口を噤んだ。
プリシラの目から、大粒の涙がこぼれていた。後ろで控えていたナターシャがすかさずプリシラにハンカチを手渡す。
2人とも胸を突くように悲痛な表情をしていた。
「プリシラさま、どこかいたいのですか?すこし、おやすみしますか?」
「いいえ、大丈夫、大丈夫よマオさん。ごめんなさい、少し取り乱してしまって…ごめんなさい…」
涙を拭いたプリシラは心を落ち着かせるように、自身の胸に手を当てて話を続ける。




