52.約束
52.約束
地図には赤い丸印がつけられており、印はバートン男爵邸を示している。
バートン男爵邸は王都中心部から離れた場所にあった。
貴族階級は、大抵は華やかな王都中心部に居を構えるのだがバートン男爵は違うようだ。
バートン男爵邸は、ギルドからは約一時間ほど時間を要するが、ヤモの健脚にかかればたいした距離ではない。
「マオ、出発しよう」
「はい!ヤモおねえちゃん!」
「リーシャ、行ってくる」
「いってきます、リーシャおねえちゃん!」
「ヤモさん、マオさんいってらっしゃい!、お気をつけて!」
リーシャのエールに送り出されたたヤモとマオは、初仕事の目的地バートン男爵邸へ向けて出発したのだった。
バートン男爵邸への道中、ヤモは肩にのっているマオに話しかけた。
「マオ、これから依頼者に会いに行くんだが、約束してほしいことがある」
「やくそくですか?」
「マオはいつも、おねえちゃんやおじちゃんと誰かを呼ぶ時につけているな?」
「はい、マオ、ヤモおねえちゃんのこともヤモおねえちゃんってよんでいます」
ほっぺたに手を当てながら、マオは普段の言動を思い返しているようだ。
「私やコンラッドやジーナ、他の人たちをおねえちゃんやおじちゃん、おばちゃんと呼んでも構わない。だが依頼者に対しては、"さん"や"様''をつけるんだ」
「おねえちゃんってよんではいけないのですね」
「そうだ。依頼者が気分を害する可能性もあるし、せっかく依頼をしてくれたのに礼儀を欠いてしまうことになる。あとは、しっかりと挨拶をして自己紹介をするのが大事だ。マオ、約束を守れるか?」
「はい!マオ、ヤモおねえちゃんとのおやくそくまもれます!」
拳ならぬ肉球を握り、マオはしっかりと頷いた。
「もし何かあれば、私がフォローする。だから、安心してのぞむんだ」
「はい!ヤモおねえちゃん!」
マオの元気な声が、どこまでも水色の空に高く伸び上がっていった。




