51.初めての依頼
51.初めての依頼
冒険者ギルドに到着したヤモとマオを、リーシャが笑顔で出迎えてくれた。
「ヤモさん、マオさん、おはようございます!!」
カウンターから身を乗り出す勢いに、ヤモとマオのみならず周囲の冒険者たちも驚いている。
「はっ…え、と…失礼しました…」
注目を一身に集めていることに気付いたのか、リーシャは赤面して縮こまるようにして椅子に着席した。
「あ、あらためて、おはようございます!ヤモさん、マオさん、昨日はありがとうございました」
「おはよう、リーシャ。こちらこそ、昨日はありがとな」
「リーシャおねえちゃん、おはようございます!きのうは、おいしいごはんごちそうさまでした!」
「どういたしまして!私もマスターも楽しい時間を過ごせました!あ、そうです!お二人とも!」
リーシャは、今度は控えめにカウンターから身を乗り出した。
普段は落ち着いているリーシャにしては、珍しく緊張気味だ。
リーシャが緊張気味な理由。それは、すぐに判明する。
「ヤモさん、マオさん!さっそく、お二人に依頼が入りました!」
改めて表情を引き締めて、リーシャは依頼書をヤモとマオに差し出した。
紙には確かに依頼書と明記されている。
「ヤモさん?マオさん?」
依頼書を二人に手渡したリーシャは、キョトンとして目を瞬かせた。
ヤモとマオが、リアクションもなく固まっていたからだ。
ヤモとマオの反応。
それは、決意を改めたがゆえのものからだった。
「ヤモおねえちゃん…はじめての、おしごとです…」
「ああ、そうだな、初仕事だ」
仕事が来ればいいと思ってはいたが、まさかこんなに早く仕事を受けることができるとは。
だが、それは同時に依頼人が苦境に立たされ、助けを求めていることを意味している。
依頼人の期待に必ずや応えなければ。
兜の緒を締め直したヤモとマオは、顔を見合わせて頷き合った。
二人は、さっそくリーシャから依頼書を受け取り目を通す。
捜索依頼書
・依頼者 プリシラ・バートン
・捜索対象者 ニック・ヨハンソン
・失踪日 三月十五日
・ニック・ヨハンソンの捜索を依頼したい。
「失踪者の捜索依頼か」
「はい、リエゾンの仕事内容にふさわしいと思います。詳細はご依頼者様から直接お話ししたいとのことです。それでなんですけど…」
そこまで言ったリーシャは僅かに声のボリュームをひそめた。
「実は、今回のご依頼はジョセフ・バートン男爵のご息女個人からのご依頼なんです」
「男爵令嬢からの依頼…?」
「そうなんです。ですから、もしかしたらデリケートなご依頼になるかもしれません。最初の依頼から大変かもしれませんが…」
いささか驚くヤモに、リーシャは神妙な表情で頷いた。
男爵令嬢直々の依頼とは、非常に珍しい。
詳細は聞かなければ分らないがもしかした内容によっては大変な任務になるかもしれない。
ヤモは緊張感から気持ちを引き締めた。
マオはというと、真剣な眼差しで依頼書に視線を落としていた。
表情には緊張感を帯びているが双眸に強い意志が宿っている。
「マオ、依頼を受けるか?」
「はい、ヤモおねえちゃん!マオ、いらいにんさんのためにがんばります!」
ヤモの問いかけに、マオは気合いいっぱいの返事で応えた。
「では、、リーシャ。この依頼を受けさせてもらう。依頼者に話を聞きたいのだが、都合の良い日は聞いているか?」
「はい、プリシラ様からは今日にでもいらしてほしいと伺っています。ギルドから来たと、家人の方に伝えてもらえば大丈夫だそうです」
「分かった。それなら、これから向おう」
「承知しました。こちらは、バートン邸への地図です。お使いください」
リーシャから渡された地図にヤモは軽く目を通す。
マオもヤモの肩の上から地図をのぞきこんだ。




