46.ミケ子におまかせ
46.ミケ子におまかせ
赤ん坊の頃よりヒューマン族のソフィと暮らしてきたマオは同族に会ったことがない。
父母の記憶も幼さゆえに覚えていないのだ。
ミケ子に親近感を感じるのは、当然かもしれない。
「さてっ、ミケ子に割符を配布してもらうかね。マオや、今日はお金の預け入れはするつもりかい?」
「はい、おかねをおあずけしたいです」
「分かった、預け入れだね。ホップ」
「はいよ、ばっちゃん。ミケ子、仕事だぞ」
ホップが声をかけつつ、ミケ子の頭をなでる。
「…ふなぁぁぁん」
頭をなでられた直後、ミケ子が口を開いた。そこから聞こえてきたのは、気の抜けようなのんびりとした鳴き声。
「ヤモおねえちゃん、みけこさんはおしゃべりをするのですか?」
「ミケ子はマジックアイテムだからな」
「まじっくあいてむ?」
「さっきのマジックペーパーと一緒さ、マオ氏。魔道具師が作った製品のことをマジックアイテムっていうんだ。ミケ子は、カグヤ皇国の魔道具師が作ったマジックアイテムなんだよ」
ホップの説明をマオは感心し切ったように頷きながら聞いていた。
マジックアイテムは便利アイテムとして国内に流通し人々に愛用されている。
キッチンかまどで使用されているマジックアイスもマジックアイテムの代表格だ。
「マオ氏、手続きを開始しよう。ミケ子」
「ふわぁぁぁん」
ホップの呼びかけに応えたミケ子が、目を細めて口を大きく開ける。
マオがドキドキしながら見守る中、ホップは用紙をミケ子の口に投入した。
ミケ子は登録用紙を口の中に収めると、もちゃもちゃと咀嚼した後にごくんっと飲みこんだ。
初見のマオにとっては衝撃的な光景だったのだろう。マオは双眸をまん丸くして固まっていた。
「んなぁぁぁ…」
チリリンッ、とベルを揺らすような音が鳴り、
「トウロクカンリョウニャ。ワリフヲハイフスルニャン。ウケトルニャン…ぷっ!」
そう言った後、両目をかっぴらいたミケ子は口をモゴモゴさせたかと思うと、勢いよく何かを上に向かって口から吹き出した。
キラリと銀色に光るそれは、天井付近まで到達した後に、寸分違わずにマオのもとへゆるやかに落下していく。
「は、はわわ…」
「よっと…」
衝撃を受けたままポカンとしているマオに代わり、ヤモがそれをキャッチした。
ミケ子が吹き出したそれはささやかな輝きを帯びた銀細工。
丸く平たい部分には表面にはマオの名前、裏面にはマオの肉球紋が転写されており、手首に通せるほどの長さのチェーンが取り付けられている。
「マオ、これが割符だ」
「これがわりふ…キラキラしていて、きれいです」
ヤモが割符を差し出すと、マオはようやく我に返った。
マオはヤモから割符を受け取ると、不思議そうに裏表を返しながらしげしげと確認する。
「無くさないように大事に持っているんだぞ」
「はい、ヤモおねえちゃん!」
頷いたマオはいそいそと背負っていたリュックの中に割符をしまいこんだ。
「ツヅケテオトリヒキシマスカニャ?」
「おとりひき…」
「預け入れや引き出しをするかどうかのことだ。マオはお金の預け入れだな」
「はい!みけこさん、マオはおかねをおあずけしたいです」
マオはリュックをゴソゴソすると、巾着袋を取り出した。
「カシコマリ」
了承したミケ子は、再び口を大きく開けた。
「マオ、ミケ子の口の中に袋ごとお金を入れるんだ」
ヤモはマオを抱き上げると、ミケ子に近付けた。
しかし、マオは戸惑ったようにヤモとマグノリア、ホップを見上げる。




