45.ミケ子
45.ミケ子
「マオのおなまえは、マオです。おしごとは、リエゾンです」
その途端、マオの声に反応するように紙の表面から淡い光が湧き上がる。
次いで、サラサラと紙の表面に文字がひとりでに浮かび上がっていく。
名前 マオ
職業 リエゾン
登録完了
次の手続きへお進みください。指紋登録後にミケ子より割符が配布されます。
「わ、わぁぁ!すごいです、ヤモおねえちゃん!マオがおしゃべりしただけなのに、キラキラひかってマオのおなまえとおしごとがでできました!」
マオは興奮気味に両手をパタパタと動かす。感動を身振り手振りで伝えようとしているようだ。
「これはな、マジックペーパーというんだ。字だけでなくマオの声も記録できるんだぞ」
「マオのおこえもですか!すごいです!」
オッドアイの双眸をキラキラさせながら、マオは感動冷めやらぬ様子でマジックペーパーを眺める。
マオの反応が新鮮だからか、マグノリアやホップ、ギルド職員たちも頬を緩めてマオを見守っていた。
「さあ、マオ氏。次の手続きにうつろう」
「はい、ホップおにいちゃん!」
「次は、この辺りに手のひらを当てるんだ。マオ氏の場合は掌紋をとるからな」
ホップは紙の余白を示し、マオは言われた通りにそこに右手をのせた。
時間としては四、五秒ほど。
「マオ氏、手を離していいぞ」
ホップの指示に従いマオが紙から手を離す。
すると、そこにはマオの掌紋こと肉球の紋がしっかりと転写されていた。
マオは再び驚きの表情を浮かべて、紙と自分の手のひらを見比べる。
「マオの、おててのかたちです!マオ、おててになにもつけてなかったですよ」
「マジックペーパーは朱肉がなくても転写ができるのさね。便利なつくりだろう」
マオの疑問にマグノリアが答えてくれた。
「次は、ミケ子から割符を出してもらって登録手続きは終わりさね」
「みけこ…?」
「ミケ子はあの子のことさ。案内するよ」
マグノリアが案内してくれた場所、カウンターの端の方にミケ子は鎮座していた。
といっても、人でも亜人種でもない。百五十cmほどの陶器の置物だ。
丸い顔に三角の耳。楕円形の目と黒い瞳に左右三本ずつのひげ。
どっしりとした雪だるまのような丸みを帯びた身体つき。
全体的には身体の色は白色だが背中には茶色と黒色も混じっていた。
ミケ子は床に敷かれた正方形の赤いクッションに座り、右手を顔の横に上げている。
「ヤモおねえちゃん、みけこさん…ちょっとマオににてますね」
「ふむ…言われてみると確かに似ているような…」
そんなはずはないだろうと思っていたヤモだったが、よくよくミケ子とマオを観察して納得した。
確かに、体型は違うがどことなく似ているような気がしないでもない。
しげしげとミケ子を観察するマオに、マグノリアが教える。
「ミケ子のモデルはね、カグヤ皇国の猫って動物がモチーフなのさ」
「ねこ?マオとおなじなのですか?」
「あたしも実物は見たことがないんだけどね。マオに似ているのかもしれないよ」
「マオのおともだちかもしれないのですね」
マオは嬉しそうに笑うと、ミケ子を憧憬の眼差しで見上げた。




