32.思い出のミルティアプリン
32.思い出のミルティアプリン
「…すきなものですか?」
雪桃ジュースを一口飲んだマオは、小さく首を傾けて思案した。
ややあって、マオはハッとしてから何かを思い出したように顔をほころばせた。
「マオ、ミルティアプリンがいちばんすきです!」
「ミルティアプリンか?」
ヤモが聞き返すと、マオは頷いた。
「はい、ソフィおばあちゃんがつくってくれたんです。あまくてぷるぷるでおいしいのですよ!」
「思い出の味なんだな」
「はい!さんじのおやつのときやマオがおねつをだしたときも、ソフィおばあちゃんがつくってくれました」
そう語るマオの表情は思い出をかみしめるようにいとおしげだ。
「ミルティアプリン…。よーし、まかせておいて!とびっきりおいしいミルティアプリンを作るわ!」
「そうと決まれば、夜のうちにミルティアを煮出しとくか!マオちゃん、楽しみにしといてくれよ!」
マクリール夫妻が俄然、張り切り出す。食事も忘れて、今にもキッチンで仕込みを始めんばかりの気合のいれようだ。
とはいえ、食事を途中で放り出すことはご法度。
マクリール夫妻は食事を続けながらも、プリン作りに取りかかりたくてウズウズしている様子だった。
「ジーナおばちゃん、コンラッドおじちゃん、ありがとうございます!マオ、たのしみです!」
喜ぶマオにマクリール夫妻は嬉しそうに破顔して顔を見合わせた。
歓迎会は料理や飲み物がなくなるまで続き、話は尽きずおおいに盛り上がった。
お開きになる時間を告げたのは、マオの大きなあくびだった。
「マオ、お腹いっぱいです…」
どうやら眠たくなってきたらしい。もう一度、ふわぁっと大きなあくびをして目をこする。
満腹や王都までの慣れない長旅疲れ、無事に冒険者登録を出来た安心感もあいまって眠気を手伝ったのだろう。
それに、マオはまだ五歳。幼い子供なのだ、無理もない。
「マオ、しあわせです…」
目はしょぼリとし、マオは喋りながらウトウトとし始めている。




