27.幸せな日々が何よりの恩返し
27.幸せな日々が何よりの恩返し
「俺たちはな、マオちゃん。お返しが欲しくてマオちゃんにかまどに住んでほしいわけじゃないぞ。マオちゃんが住んでくれたら、きっと賑やかになって楽しくなると思っているからなんだ」
コンラッドは、にかっと笑う。豪快で、不安なんて吹き飛ばしていまうような笑顔だ。
「そうよ、マオちゃん。だから、このお金をあたしたちに渡そうとしなくていいの。マオちゃんが欲しいものを買ったり将来のために貯めておきなさい」
「コンラッドとジーナの言う通りだ」
「お前さんもだぜ、ヤモ」
急に話を振られたヤモはぎょっとした。
心当たりのないヤモが戸惑っていると、マクリール夫妻はやれやれといった風に肩をすくめる。
「お前さんも、俺たちに恩を返そうなんて考えなくていいってことさ。休みの日は、しっかり休む!分かったな?」
コンラッドが、コツンと指でヤモの額をつついた。
少し考えたヤモは、ハッとする。今日の朝のやりとりを思い出した。
「私は、その…」
「ヤモおねえちゃんもマオといっしょなのですか?」
ゴニョゴニョ口ごもるヤモをマオがキラキラした目で見上げる。尻尾はピンっと伸びて嬉しそうだ。
何やら期待をさせてしまっているらしい。
目が合うとマオは嬉しそうに笑う。こそばゆい気がしつつもヤモは観念して笑みを返した。
マオとヤモの様子にマクリール夫妻は吹き出してしまった。
壁にかけられた時計を確認したジーナはパンパンと手を叩く。
時間は十九時過ぎ。丁度、夕飯時だ。
「さぁ!無事に解決ということで、夕ごはんにしましょう!」
「ハバネロピザ買ってきたぞ!まろやかチーズピザもあるからな!マオちゃん、チーズは好きか?」
「マオ、チーズだいすきです!」
マオは片手を上げて元気よく宣言する。
コンラッドはテイクアウトしてきた2つの平たい箱を開けた。中には大きなピザ。
一つは、敷き詰められた真っ赤なハバネロの上にとろけたチーズが載ったハバネロピザ。
激辛だがチーズのまろやかさとさ塩気がマッチして汗も手も止まらなくなる旨さだ。
もう一つは、四種類のチーズが載ったチーズピザ。甘めのチーズと塩気のあるチーズの塩梅が絶妙で最高に美味い一品である。
ハバネロを見たことがないのか、マオは興味津々にハバネロを眺めながら鼻をくんくんさせた。
「ヤモおねえちゃん、このピザはまっかっかですね。おなはがちくちくします」
「これはハバネロが載っているからな、辛いぞ。マオは、こっちのまろやかチーズピザにしておくんだ」
「はい、ヤモおねえちゃん!」
マオは元気な返事をすると頷いた。
その姿にヤモは一安心する。マオは元気とマイペースを取り戻せたようだ。
「今、温めるからね!コンラッド、他に何品か作りましょうか?」
「そうだな、足りないかもしれないから作るか」
そう言ってキッチンへ向かったマクリール夫妻の足を扉のノック音が引き止めた。




