19.クレイドルの出発
19.クレイドルの出発
「あれまぁ、シエルはん…幸せそうなお顔してはるわ」
夢見心地な半笑いで目を回しているシエルを、葛の葉は指先でツンツンとつついて意識を確認する。反応はなく完全にのびている。
「いや、どう見てもだらしねえお顔だろ」
「仕方ないね。蘭丸、お願いできる?そろそろ出発の時間だからさ」
シエルの鼻血をハンカチで拭いてやりながら、リィンは呆れている蘭丸に声を掛けた。
「了解、大将」
蘭丸は伸びているシエルを片腕で腰の脇に抱えた。まるで酒樽を抱えるかのようだ。
この酒樽は誇り高きハイエルフです、と言われても誰一人信じる者はいるまい。
気を取り直したリィンがヤモとマオ、フレデリカとリーシャに笑いかける。
「僕たちはそろそろ出発するよ。マオ、ヤモと一緒に元気いっぱい頑張るんだよ!ヤモ、帰って来たらみんなでご飯食べ行こ!」
「マオはん、ヤモはん、お気張りやす」
「じゃーな!任務が終わったら、また会おうぜ!」
これから、危険種のデスワームを相手に長期戦だというのに一切の緊迫感を感じさせない。さすが、上級冒険者チーム筆頭格だ。
ちなみに、シエルは最後まで幸福に満ちた状態でのびたままであった。
「お前たちも気を付けてな」
「リィンおにちいゃんたちいってらっしゃーい」
「よろしく頼んだよ」
「みなさま、お気をつけていってらっしゃませ」
「ありがと!いってきます」
ヤモたちに見送られ、リィンたちクレイドルは、一路バステト地方へ向けて旅立っていった。




