124.尽力
124.尽力
(禁足地保護法の廃止…)
ヤモは心の中で復唱する。
まるで、夢の中でふわふわと漂うように実感がわいてこない。
オリバーに同意するように、フレデリカが言葉を重ねる。
「宰相閣下が提出した法案には四大貴族のうち、ボレアース侯爵家、ノトス侯爵家、ゼピュロス伯爵家のご当主たちからも賛同を得ているんだ。それに、冒険者の皆からも賛同の声が上がっている。禁足地という未踏の地を進まなければ、冒険者と名乗れる資格がないとね。それに、法が制定された百年前と違って、今は戦闘魔法術式も多く確立されているし武具や防具も進化している。禁足地を踏破できる可能性は十分に開かれていることも考慮されたんだ」
フレデリカの話をヤモは目を丸く瞠りながら聞いていた。
四大貴族のうち三大貴族から賛同を得られたのは多大な影響と強い後押しを得たも同然だ。
それに、現役の冒険者たちからの声はさらなる波を起こしうねるような手助けになる。
エウロス公爵家にとっては大きな痛手だろう。
「バートン男爵はヤモさんとマオさんには一切の非はないと、お二人を守るためならば自らの爵位を廃しても良いと私に進言したのです」
フレデリカから話を引き継いだオリバーはおおらかながらも自信満々に微笑む。
「バートン男爵は真面目で実直な人柄でしてね。彼を疎ましく思う者達がいる一方で、彼を慕う者達も多くいます。そんな彼を慕う者達の支持もあり、無事に法案は承認される見通しなのですよ。何より、陛下も撤廃に賛同していらっしゃいます。民を守るための法が民を悲しませているのならば変えなければならない。若い命を失わせてしまった責任は重くこの法改正は遅すぎた、と陛下は仰いました」
エウロス公爵家による身柄引き渡しは、後がない絶望的な状況だったはずだ。
それを覆したのは、オリバーと多くの人々の尽力と協力に他ならない。
ヤモは強張っていた身体から力が抜けていくのを感じた。身体をがんじがらめにしていた鋼糸が溶けて消えていくようだ。
ふと視線を下げるとオッドアイの双眸と目が合う。
果てしないほどに澄んだ瞳がヤモを見つめている。
言葉はなくとも、ヤモとマオは安堵したように笑みを交わした。




