122.エウロス公爵家
122.エウロス公爵家
「ヤモさんとマオさんがギルドに転移した、このことは大いなる謎ではありますが、それは追々考えることにいたしましょう。今は、お二人が生還できたことが何よりの僥倖ですよ!」
ヤモを思案から引き上げてくれたのは、ふっくらとした顔なや穏やかな微笑みを浮かべたオリバー。
オリバーの柔和な眼差しは混乱するヤモを見事に落ち着かせてくれた。
「お話を続けましょう。さて、無事にヤモさんとマオさんを保護することに成功。と、ここまでは良かったのです」
オリバーの表情からは微笑みが曇り、声音には険しい色が宿る。起こった問題を象徴するかのように、オリバーだけでなくリィンたちの雰囲気も暗い。
「エウロス公爵家から横槍が入りました」
オリバーの言葉を聞きながらヤモはしかめっ面で額に手を当て、マオは不安気にヤモを見上げてから、しゅんっとうなだれた。
横槍が入ったということは、ヤモとマオがラミア洞窟に向かうところが目撃されていたということか。
ラミア洞窟へ向かう道中、人目も少ないからと気が緩んでいたのかもしれない。
あまりにも迂闊だった。
落ちこむヤモとマオを気遣うように、オリバーが言葉を繋ぎ継ぐ。
「ヤモさん。ヤモさんとマオさんにミスはありませんよ。ラミア洞窟内で戦闘をしたのでしょう?仕方がなかったのです」
「戦闘が原因ですか…?」
「はい。エウロス公爵家による横槍の原因の一つは、音です。洞窟内での戦闘によって引き起こされた音がラミア洞窟を超えてヨロギ村まで聞こえしまっていたため、村人がエウロス公爵家へ報告をしに向かったです。それに加えて、エウロス公爵家によるバートン男爵家への私怨がもう一つの理由です」
愕然とするヤモにオリバーは苦々しい表情で頷く。
「話は複雑でしてね。バートン男爵は男爵家ではありますが、王家とも関係が深いのです。彼の曽祖父が陛下の御父上と親しかった関係で、バートン男爵自身も陛下と親交があります。それを面白く思わないのが、反王家派です」
ヤモは思わず頭を抱えて苦悩の唸りを漏らしたくなった。
反王家派とは、いわゆる排斥派。王家の政策に反対しヤモやマオのような亜人種を差別し排斥しようとする者たちの集まりのことだ。
現国王のシリウス・ペンドラゴンは亜人種とは友好的な関係を築き、ヒューマンと亜人種にとっても平等で公平な政策と治世を敷いている。
しかし、いかに平等、公平といえど様々な理由を起因にして不満は生まれるものだ。
自分たちの文化が亜人種により破壊される、亜人種の方が優遇されている、亜人種によって仕事が奪われる、が主だった亜人種排斥の理由である。
亜人種全てが善良な者たちばかりではないとしても、排斥を掲げる一部のヒューマンたちは全ての亜人種が悪であるという思想のもと過激な言動を繰り返しているのが現状だ。




