121.経緯
121.経緯
「ほほほっ、ますますびっくりさせてしまいましたね。では、気を取り直して今日までのことをご説明いたしましょう」
「宰相閣下、こちらへどうぞ」
「ありがとう、シエル嬢」
シエルが立ち上がり、自分が座っていた椅子へとオリバーを促す。
「さて、まずはヤモさん。君がいるここは私の屋敷です。そして、君とマオさんは現在、私の庇護下にあります」
「庇護下、ですか…?」
「そうです。一週間前、君とマオさんは保護されました。その後、フレデリカ嬢とリィンから私に連絡が入りお二人にはこちらで療養と逗留をしていただく形となったのです。ここならば、安全ですからね」
「で、ですが、私たちは、ラミア洞窟に行くことを誰にも伝えていなかったはずです…」
「それはな、ヤモ。俺とジーナがフレデリカとリーシャちゃんに相談したんだ。ヤモとマオちゃんは仕事だって言っていたけど…あの後から、ずっと気になっていてな。もしかしたら、ヤモとマオちゃんがラミア洞窟に行ったかもしれねえって」
「勝手なことをしてごめんなさいね、ヤモ!でも、あなたとマオちゃんのことがどうしても心配だったのよ…」
ここで、会話にマクリール夫妻が参加した。
コンラッドは目にうっすらと涙を浮かべ、ジーナは大粒の涙を流している。
マクリール夫妻は、マオがラミア洞窟の場所について尋ねた時には一抹の心配と不安を抱えていたのかも知れない。
続いて、フレデリカが口を開いた。
「マクリールご夫妻からの報告を受けたのはいいものの、ラミア洞窟は禁足地。いくら、君とマオがそこにいると分かっていても禁足地である以上は救助へ向かうことは出来ない」
「そこで、僕たちクレイドルの出番ってわけだよ!ちょうど、長期任務から帰って来たらフレデリカもリーシャも暗い表情をしていたから何があったのか話を聞いたんだ」
ここで、リィンが話を引き継いだ。蘭丸、シエル、葛の葉も頼もしげな表情で頷く。
「ヤモとマオがラミア洞窟に行った聞いてびっくりしてさ、でも救助には向かえないって言われたんだけど」
リィンは端整な顔にいたずらっ子のような笑みを浮かべて続ける。
「内緒でラミア洞窟へ行っちゃえば問題ないよねってことで向かうことにしたんだ」
「言い出したら聞かなくてね…」
フレデリカが呆れたような、眼差しをクレイドルの面々にに送った。
「リィン、シエル、蘭丸、葛の葉…」
ヤモの胸ににじむようなぬくもりが広がる。
「すまない、本当に迷惑をかけた…」
「シエルにも言われなかった?かけたのは、迷惑じゃなくて、心配でしょ!大切な友達を助けられないなら、僕たち全員、冒険者失格だよ!」
リィンたちの笑顔は底抜けに朗らかだ。心からヤモとマオを案じてくれていたのが伝わってくる。
「時間が惜しいからシエルの転移魔法でラミア洞窟まで向かおうとしたんだけど、ラミア洞窟は未踏の地だからね、転移座標が指定できない。だから、ラミア洞窟に行ける手前のミササギ村に座標を指定して転移しようとしたんだ。でも、転移をする直前に、ヤモとマオがギルドに転移してきたんだよ」
「ーーち、ちょっと待ってくれ、リィン!」
そこで、ヤモはリィンの話にストップをかけた。
自分とマオが、ギルドに転移してきた?
そんなはずはないそれはおかしい。
だって、自分とマオはーー
「私とマオは、ラミア洞窟の中に入ってバジリスクと戦闘をした。私は、その後に意識を失っている。だから、ギルドに転移するはずはないんだ。そもそも、私とマオは魔法は使えない…そうだよな、マオ」
「はい、ヤモおねえちゃん…でも、マオにもよくわからないんです…キラキラッてひかったらマオもヤモおねえちゃんもギルドにいたんです…」
ヤモに確認されたマオは戸惑いながら答えると、困惑顔で首を傾げた。
「キラキラ、光った…?」
「ヤモが目を覚ます前に、わたしたちもマオからこの話を聞いて驚いたよ。でも、ヤモとマオがラミア洞窟の中にいたのも確かだけど、ギルドに転移してきたのも確かなんだ。あの現象は、まぎれもなく転移魔法か転移魔法に近い現象だった。ただ、どうして転移したのかは分からなくて…」
混乱を極めそうなヤモを落ち着かせるように、シエルが話を引き取る。
マオは不安そうな表情でヤモとシエルを交互に見上げている。
言葉が継げずに沈黙するヤモの思考を柔らかに手を叩く音が引き戻した。




