120.宰相閣下
120.宰相閣下
「おやおや、皆さん落ち着いて。ヤモさんがびっくりなさっていますよ」
賑やかになった室内に穏やかな声とともに一人の人物が現れた。
サラサラとした蜂蜜色の髪とぱっちりチャーミングな蒼氷色の瞳に、ふっくらとした温和な顔。
もっちりとした体格に身につけているのは青と銀を基調として控えめな刺繍が施された簡素な白い礼服。
その人物の後にはフレデリカとリーシャ。
フレデリカはヤモの姿を見た途端に安堵の顔で頷き、リーシャは顔をくしゃくしゃにして溢れる涙を拭っている。
「フレデリカ、リーシャと…あ、あなたは…!」
ヤモは仰天して居住まいを正す。とはいっても、身体は痛むので、ほんのりと背筋を伸ばすことしか出来ない。
「レオンハルト、宰相閣下…!?」
「初めまして、ヤモさん。オリバー・レオンハルトと申します。息子のリィンがいつもお世話になっていますね」
目の前の人物、リィンの父親でありカルディア王国の宰相を務めるオリバー・レオンハルトはおっとりとした笑みを浮かべた。
オリバー・レオンハルト。カルディア国王・シリウス・ペンドラゴンの盟友であり彼とともに国を率いる切れ者だと聞いている。
リィンが宰相の息子であることは以前から知ってはいるが、こうして宰相と直接に顔を合わせるのはこれが初めてだった。
それもそのはず。
宰相閣下の顔を見る機会は、王国新聞に載った写真や王国感謝祭くらいだからだ。
ヤモが一人狼狽していると、涙を拭って顔を上げたマオが表情を輝かせた。
「オリバーおじちゃん!ヤモおねえちゃん、おめめをさましましたよ!」
「おっ、おじ!? マ、マオ!宰相閣下に失礼なことを言ってはダメだ!」
「ほほほっ、良いのですよ、ヤモさん。私とマオさんは、もうマブダチですからね!最近のトレンド人形劇も教えていただいたのですよ!」
「はい!マブダチです!」
おおいに困惑するヤモをよそに仲良くハイタッチをするマオとカルディア王国宰相。
宰相の息子であるリィンはといえば、腕を組んで満足気な笑顔で頷いている。
マクリール夫妻やシエルたち、フレデリカとリーシャも微笑ましげにマオとオリバーのやりとりをを見守っていた。
「マ、マブダチ…?」
ヤモが眠っている一週間の間に、いったいぜんたい何があったのだろう。




