12.おねえちゃん
12.お姉ちゃん
「あ、ああ…よろしく。私は、ヤモだ」
「ヤモ…ヤモ…ヤモ……ヤモおねえちゃんですね!マオはマオです!」
ヤモをじっと見つめたままマオはやや考えた後、ぱあっと顔を輝かせた。まん丸の双眸は溢れんばかりの純粋さで満ちている。
「お、おねえちゃん…?」
ヤモは双眸を瞬かせて呟いた。
独りごちは飴玉のように転がり、胸に柔らかな感覚をぬくやかに染み渡らせていく。
そんな呼ばれ方をされたのは、生まれて初めてだ。
ふと視線を巡らせると、フレデリカ達は微笑ましそうな眼差しでヤモとマオを見守っていた。
なぜか、シエルだけは得意満面な表情をたっぷりと浮かべている。
まるで勝ち誇ったかのようだ。
「ヤモ」
どうにも面映い感覚を覚えていたヤモに、シエルが声を掛ける。ちらりと見ればシエルはさらに得意満面の様子で腕を組んでいた。
「わたしもね、シエルおねえちゃんって呼んでもらえたよ」
「……そ、そうか…よかったな」
何かと思えばただの自慢だった。何だか聞いて損しをした気分だ。
しかも、シエルの瞳にはあからさまな嫉妬の色が揺らめいている。
「お姉ちゃんか…よかったじゃねぇか、ヤモよ」
謂れのない嫉妬を向けられて、複雑な気持ちが拭えないヤモに声を掛けたのは、ずっと黙っていた蘭丸だった。
クールに振る舞っていた蘭丸だが、語りながらも視線は遠くを見つめている。
「俺なんて、蘭丸おじちゃんって呼ばれたからよ。俺さ、まだ二十五なんだけどな…そうか、もう、俺っておじちゃんだったんだなぁ…」
ふっと笑う蘭丸。表情は心なしか詩人のような悲哀に満ちていた。
普段ならば、詩人とは程遠く、細かいことはいっさい気にもしない豪放磊落な蘭丸をここまでノックアウトさせるとは。
蘭丸には悪いがヤモはマオに対して思わず感心してしまう。




