115.好機
115.好機
マオは身をかがめると、バジリスクの頭、否。
申し訳程度しかない小さな耳孔に顔を近付ける。
そして、マオは大きく息を吸いこむと。
「わぁーーーーーー!!」
バジリスクの耳孔にとんでもなく大きな声を叩き込んだ。
マオの壮大な声は、バジリスクの耳孔だけではなく最奥内を揺らさんばかりに満たして響き渡る。
幼く小さなその身から発せられたとは思えないほどの声量だ。
「シュッ…シュゥゥゥゥゥッ…!?」
マオの声が響いた直後にバジリスクに明確な変化が起こった。
「止まった…?」
バジリスクは呆けたように口を開けたまま、放心したように停止していたのだ。
「ヤモおねえちゃん、チャンスです!」
唖然としていたヤモの背中をマオの声が喝を入れるように押す。
その瞬間、ヤモの身体は反射的に動いていた。
一気に疾走しマオのもとへと駆けつける。
マオを左腕で抱きかかえると、ヤモは右手に握った十文字槍を振り上げた。
槍の切先は一直線にバジリスクの急所の結晶体へと向かっていく。
だが、ヤモの動きを察したかのように止まっていたバジリスクの身体が脈打ち、牙を剥き出した口からは泡立ち混じりの唸り声が漏れ聞こえてきた。
(ーー間に合え!!)
ヤモはありったけのスピードとフルパワーを十文字槍に乗せて振り下ろす。
まるで世界がスローモーションのように見えた。
バジリスクの身体がヤモとマオを振り払うようにのけぞろうとする。
それより前に、ヤモの十文字槍の切先がバジリスクの結晶体を砕きながらめりこんだ。
バジリスクから喉が張り裂けんばかりの絶叫が発せられる。
「ギッシャャャャャャァァァァァァァ!!」
十文字槍の切っ先は結晶体ごとバジリスクの頭頂部を貫いた。
卵の殻が砕けるかのように結晶体は呆気なく粉々になって砕け散る。
バジリスクが激しく身体を反らしながら左右に振った。




