114.駆けるマオ
114.駆けるマオ
湿り気があり生温かく足の裏に張り付くような不可解な感触。
(な、何だ、この感触は…)
「ヤモおねえちゃん、おめめをあけてだいじょうぶですよ!」
「……なっ!?」
マオの声にヤモは素直に目を開けて、驚愕した。
あんぐりとした口からは二の句が継げない。
「シュッ、シュァァァァー!!」
バジリスクは怒りを爆発させるかのように身体を左右に揺らしている。
それもそのはず。ヤモとマオがバジリスクの背中に乗っているからだ。
バジリスクにとってみれば不快な異物が自身の身体にまとわりついているのと同じである。
太く長い身体をくねらせながら暴れるバジリスクは明らかに苛立っていた。
身をくねらせて背中に乗るヤモとマオに食らいつこうにも届かない。暴れるほどに岩壁に頭や身体ををぶつけてしまう。
「ヤモおねえちゃん、あれです!」
荒れ狂うバジリスクの背中で両足を踏ん張らせるヤモにマオは声をかけて指をさす。
視線を向けたヤモはハッとした。
離れてはいるが、バジリスクの急所―頭頂部にある結晶体が確認できる。
急所へは距離にして六m。短いように思えるが、暴れるバジリスクの上では足元は不安定。
近付くのは至難の業だ。
これは、振り落とされるのを覚悟で一気にたどり着くより他ない。
ヤモは上手くバランスをとりながら一歩踏み出そうとした。
その時だ。
「――!?」
両肩から重さが消えた。
同時に、ヤモの前を赤いポンチョとリュックを揺らして小さな後ろ姿が勇敢に駆けていく。
ーマオだ。
マオは器用にバランスを保ちながらスイスイとバジリスクの頭付近へ向かっていた。
「マオ!?やめろ、マオ!戻るんだ!!」
心臓がのた打ち回るような悲鳴を上げた気がした。
慎重さなどかなぐり捨てて、ヤモはマオの背中を追って走る。
その間にマオはバジリスクの頭付近に到着した。




