113.決戦
113.決戦
「準備はいいな、マオ。行くぞ…!」
「はい、ヤモおねえちゃん!」
ヤモは十文字槍を構えて呼吸を整えると、地面を蹴り岩の後ろから飛び出した。
ヤモの足音が、最奥内にところせましと響き渡る。
「シュッ!?シュゥゥゥー!!」
不意をつかれたバジリスクだったが、すぐに臨戦態勢になり喉を擦るような咆哮を上げた。
無論、目を閉じているヤモとマオにはバジリスクの姿は見えていない。
おぞましい気配を感じ咆哮も聞こえてくるのに視覚で捉えることが出来ないのは筆舌にし難い恐怖をもたらす。
「ヤモおねえちゃん、うしろによけてください!」
マオの声がヤモの耳朶を打つ。まるで闇を照らし出すひかりのようだ。
ヤモはマオの導き通り、後ろに飛び退いた。
次の瞬間、ヤモとマオがたった今いた位置に衝撃音が炸裂する。
バジリスクの開けた大口が地面にぶつかった音だ。
「ヤモおねえちゃん、みぎによけてください!」
マオの声は的確に正確に指示を出していく。その声に従えば確実にバジリスクの攻撃を避けることが出来た。
バジリスクの攻撃はヤモにかすりもしない。
マオの指示は驚くほどの精度だ。
ヤモは微かな気配を感じるのがやっとだというのに、同じく目を閉じているマオはまるでバジリスクの動きが見えているかのようだった。
「ヤモおねえちゃん、まえにはしってください!」
指示が変化する。マオの声は揺るぎない芯のように高らかだ。
マオの清らかな声に身をあずけるようにして、ヤモは全力疾走した。
最奥内に禍々しい咆哮と岩壁を削る荒々し音が轟き渡る。
その咆哮と轟音をはじき飛ばすようにマオが勇ましく声を張り上げた。
「ヤモおねえちゃん、おっきくジャンプです!」
瞬間、ヤモは脚の筋肉に力をこめて渾身の力で身体を跳ね上げる。
身体がふわりと宙へと舞う。
ややあって、ヤモとマオは下降し着地した。
そこで違和感を覚える。
足の裏に伝わる感触と温度が地面のそれとは異なっていたからだ。




