109.バジリスク
109.バジリスク
バジリスクは錐で開けたかのような小さな鼻孔を地面に近付けながらぬめるように地面を這う。
こつりと、バジリスクの鼻が赤い鉱石に当たる。
すると、バジリスクは大きく口を開けてその鉱石をおいしそうに食べ始めた。
噛み砕く咀嚼音が不気味に響き渡る。
人間だけではなく鉱石まで食するようだ。
「バジリスクは邪視を持つ。目を合わせただけで相手を麻痺させることができるんだ。だから、何があってもバジリスクと視線を合わせるな」
「は、はい…ヤモおねえちゃん…!」
ふるふると震えながらもマオは頷いた。
ヤモは再びバジリスクの様子を伺う。
幸いなことに、結界石の効果があるのかバジリスクはヤモとマオの存在に気付かずに食事に夢中だ。
だが、下手に動けばヤモとマオは哀れな獲物に成り下がるだろう。
バジリスクは鉱石を食べ終わったからか満足そうに鎌首をもたげる。
「あれが、急所か」
ヤモはバジリスクの頭頂部にある泥水色の結晶体を睨み据える。
古代史に記されている通りならば、バジリスクを確実に仕留めるための方法はあの結晶体を破壊することだ。
とは言っても、仕留め方を知っていたとてバジリスクの邪視を防ぎながら結晶体を破壊する方法が浮かばない。
緩慢そうに見えるがバジリスクの動きは恐ろしく俊敏だという記録が残っている。
一気に勝負を仕掛ける方法はあるが、邪視にさらされるというリスクをはらむ。
どうするべきかと考えあぐねているヤモの隣で、マオが急にリュックの中を探り始めた。
「マオ、どうした…?」
「ありました…!」
訝しむヤモをよそに、マオは目当ての物をリュックから取り出す。
小さな白い手には、二つにに畳まれたペーパーが握られていた。
マオはそのペーパーを開く。そこにはさくらんぼのドライフルーツがひと粒包まれていた。
ヤモは、ふと洞窟に到着する前の休憩時のことを思い出す。
そういえば、さくらんぼのドライフルーツが好きなマオにヤモの分のさくらんぼをあげたのだ。
マオが取り出したのはその時のさくらんぼのドライフルーツ。




