107.異変
107.異変
ヤモとマオは視線を隅から隅まで動かして洞窟内を確認する。
と、その時。
「ぴっ、ヤモおねえちゃん…」
肩の上で、マオが怯えたような小さい悲鳴を上げてヤモにくっついた。
マオが反応した箇所に目を向けたヤモも思わず息を呑んだ。
そこには、おびただしい数の人骨が無造作に冷たい地面で転がっていた。
転がった頭蓋骨の窪んだ目は二度と生気を宿すことなく無念と闇を落としこんだままだ。
数多の骨は、放置された年月が染み付ついて茶色味や黄色味を帯びている。
ラミア洞窟が禁足地になる前にここで犠牲になった者たちの亡骸だろう。
その中で一体だけ真新しい白い骨が骨の山に紛れて転がっている。
ー何とむごたらしくでおぞましい、死者たちの墓標だろう。
真新しい白い骨は、確実に最近の犠牲者の骨だ。
最近の犠牲者で思い当たるのはたった一人。
あの真新しい白い骨はニック・ヨハンソンの可能性が高い。
「マオ、近くに行って確認してみよう」
「はい、ヤモおねえちゃん」
ヤモとマオは、真新しい骨をよく確認するために側へと近付こうとした。
「シュゥーー…」
不意に、奇妙な音が聞こえた。鼓膜をか細く引っ掻くようなかすれた高音。
同時に、ひりつくような感覚が全身に絡みつく。
ヤモは背中に背負った十文字槍を構えて周囲に視線を奔らせた。
奇妙な音は絶え間なく聞こえてヤモとマオへとにじり寄るように響き渡る。
「ヤモおねえちゃん、こわいにおいいっぱいします…!」
「いったん、隠れるぞ…!」
「はい、ヤモおねえちゃん…!」
ヤモとマオはその場を離れて大きな岩の後ろに身を隠す。
地面に下ろしたリュックから素早く結界石を取り出したヤモは、自分とマオの周囲に置いた。
簡易結界にどこまで効果があるか未知数だが、この状況下においてはないよりはマシだ。




