106.最奥
106.最奥
通常であればランタンや松明が必要だが、暗闇でも目が利くヤモとマオには必要ない。
洞窟内部の表面はゴツゴツとした漆黒の岩で覆われていた。
歩き進める度にヤモの足音が洞窟内に充満していくように響く音が不気味に聞こえてくる。
ヤモもマオも無言だった。
冷たく肌にひりつくような緊張感が唇を縫い付けている。
視線の先には待ち構えている最奥への入り口が、真っ黒な口をぽっかりと開けていた。
ガビたちの言う通り、魔物一匹出てこなければ気配さえない。
最奥へ続く道は、階段状になっている。
ただ、階段といっても人工的に整備された造りではない。
いびつで、気を付けなければ足を踏み外して一気に転がり落ちてしまう。
慎重にゆっくりと階段を下っていくと、不意に空気が変化したように思えた。
ヤモは一旦足を止めると、警戒しながら視線をめぐらせる。
マオも前方をじっと見つめていた。
何かの臭いを嗅ぎ取っているのかマオは鼻をくむっと動かしている。
しばらく様子を伺っていたが前方には目立った変化の素振りはない。
ヤモとマオは警戒はゆるめずに、さらに用心深く先の方へと足を進めていった。
見えざる力に招かれるようにしてヤモとマオは闇に向かってどんどんと近付いていく。
急に、視界が一気に広がる。
そう、そこは開けた場所。つまりは到着したのだ。
―禁足地・ラミア洞窟の最奥に。
ここはニック・ヨハンソンが最期を迎えた場所。
そこは、おぞましさと美しさが忌々しくも共存する空間だった。
内部は広々としたドーム状になっており、あますことなく黒い岩で覆い尽くされている。
黒い岩壁と地面からは、ヤモの背丈を超える大岩に混じって色とりどりの鉱石が無数に伸びていた。
鉱石だけが生命の息吹を思わせる輝きで、暗闇の中に淡く浮かび上がっている。
長さはいずれも四十cm〜五十cmくらいだろうか。
石のすべては外の鉱石よりも混じりけがなく透き通るような純度だ。
様々な色の鉱石に隠れるようにして、ごくわずかだが無色透明な石が地面にから伸びている。
ー面影石だ。
いずれも、爪の先ほどの極小サイズで宝飾品として使える大きさではない。
やはり、ラミア洞窟に面影石がふんだんにあるというのはニックの推測でしかなかったのだ。
「あの透明な石が、面影石か…小さいが原石は初めて見るな」
「キラキラしてますね…」
油断を許せない状況も忘れてヤモとマオは思わず感嘆の声をこぼす。




