103.スピカフィッシュの串焼き
103.スピカフィッシュの串焼き
ヤモとマオは焚き火の火を絶やさぬようにしながら、明日の朝までじっくりと休息を取る。
改めて見ると、侘びしく思えたミササギ村の跡地はゆったりと静かな時間が流れており意外にも居心地は良かった。
タンガ村のような賑やかさはなくてもミササギ村に住んでいた村人は穏やかな時の中で幸せに暮らしていたのかもしれない。
ヤモとマオは夕食に彩りを添えるため、暗くなる前に小川へ魚を漁りに繰り出した。
昨日、マオが水を汲んできてくれた小川だ。
釣り道具も持参すべきだったと後悔したが、ヤモには愛用武器の十文字槍がある。
小川に到着すると、澄んだ川の中を数匹のスピカフィッシュが泳いでいた。
木々の間から差し込む陽光がスピカフィッシュの瑠璃色の鱗に当たると、光の粒が踊るように煌めいている。
スピカフィッシュは花びらのような形をしているため光をまとった花びらが水中を舞い踊るかのようでとても神秘的だ。
ヤモとマオは二匹のスピカフィッシュを捕獲するとほくほく顔で拠点へと戻った。
「ヤモおねえちゃん、おさかなぴちぴちですね!」
「ああ、大物が漁れたな」
そのうちに、太陽はじんわりと溶けるように暗橙色へと染まり紫黒色と混じり合って空一面に広がっていく。
「マオ、夕飯にするか」
「はい、ヤモおねえちゃん!おさかなをこんがりするのですね!」
「塩がないから素焼きになるが、焼くとふわふわになってうまいぞ」
ヤモはスピカフィッシュの内臓を処理し、拾ってきた枝を串代わりにして刺し込むと焚き火でじっくりと焼いた。
火に炙られた瑠璃色の鱗が弾けるような音を鳴らして表面が濃色に変わっていく。
ふくよかな芳ばしい匂いが漂い始めてくる。
「よし、焼けたぞ。ほら、マオ」
「ヤモおねえちゃん、ありがとうございます!こんがりしておいしそうです…!」
スピカフィッシュの串焼きを受け取ったマオは目を閉じて香りを堪能するように、くむくむと鼻を動かした。




