100.廃村での野営
100.廃村での野営
一本橋のあたりは朝だというのに不気味なくらいに静まり返り、橋の先は仄暗い翳が落ちている。
活発なヨロギ村の中心部とは大違いだ。
「マオ、ミササギ村に着いたら今日はそこで野営をして、朝になったらラミア洞窟に向かおう」
「はい!ヤモおねえちゃん」
ヤモとマオは緊張気味に一歩を踏み出すと、橋を渡り第一目的地のミササギ村を目指した。
忘れ去られたかのような橋を渡り終えると、すぐにシラズの森の中に入りそのまま一本道を進む。
誰も通らないのだろう。道は過去に補正された痕跡はあるが、長い年月をかけて生い茂った草や野花に覆われている。
侘びしい歴史だけが取り残されているように思えた。
かつてはこの道をミササギ村の人々が行き交った時代もあったはずだ。
休憩をはさみながら三時間ほど歩いていくと、開けた場所に出た。
ーー小さな村の跡地。
呪いの祝福によって忘却の彼方に置き去られた村・ミササギ村だ。
村の跡地には放置されて朽ちた数軒の家と農機具、荒れ果てた畑が残されている。
ヤモは視線を巡らせながら耳を澄ませた。
村の中は、静けさに包まれており魔物が近づく音などは聞こえてこない。
「マオ、怪しい音は聞こえたりしないか?」
ヤモも聴力は良い方だが、マオには劣る。マオの聴力ならばより精緻な音も捉えられるはずだ。
「んー…」
マオは目を閉じて両耳をそばだてた。同時にベビーピンクの鼻もくむくむと動かしている。
こころなしか、マオのヒゲも何かを感じ取るかの様にして前のめりになっていた。
じっくり気配を探っていたマオは、やがてぱちっと目を開けて頷く。
「ヤモおねえちゃん、こわいおとはきこえないです。こわいにおいもしないです」
「香りも分かるのか、すごいなマオ」
「はい!マオのおはなはたくさんのにおいをくんくんできます!おひげでもわかるのですよ!」
褒められて嬉しいのかマオは照れたように顔をほころばせた。
どうやら、マオのヒゲはセンサーのような役割を担えるようだ。
ヤモも、人よりは鼻はきく方だがマオのように正確には嗅ぎ分けられないし探知能力のあるヒゲもない。
ヤモとマオは適当な場所にテントを張り結界石を置くと、休憩中に飲んだ水筒の中身の補充と焚き火の準備を始めた。
ヤモは焚き火の準備を、マオは水の補充と手分けをする。
水の場所はマオがせせらぎの音をとらえてくれたためマオに任せることにした。
「マオ、何かあったらすぐに大きな声で私を呼ぶんだぞ」
「はい、ヤモおねえちゃん!マオ、おみずくんできます!」
マオは元気いっぱいに応えると、水筒を抱えてちょろろっと走っていった。
ヤモも急いで森の中から十分な量の乾いた枝を集めてテントに戻る。
幸いなことに、マオはヤモを呼ぶことなく水を確保してテントに戻っていた。
「ヤモおねえちゃん、おみずくめましたよ!おさかなもいました!」
「ありがとな、マオ。魚がいるのは水が綺麗な証拠だな。さて、火を起こして食事にしよう」
ヤモは手際よく枝をむと、持ってきた火打ち石で火をつける。




