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米国衛星-GPS III SV9-のレンズ

2026年4月22日

米国東部夏時間  05:43

パキスタン標準時 14:43

東京       18:43



大気圏外。

米軍事衛星GPS III SV9の太陽電池パネルが左右に伸び、その両翼に太陽の強烈な光が反射している。

青い地球を映したオプチカルレンズの焦点が、ゆっくりと滑る。

レンズ内の反射光は、青紫から赤へ、赤から鈍い橙へと変わっていった。




米国・バージニア州。

DoD―米国国防総省、通称ペンタゴンー

中央司令室に、RSO主席法執行・安全保障アドバイザーが入ってきた。

すでに室外には、”MSG(Marine Security Guard)”が配置されている。






"Good morning, Jim McClain. What's the situation west of Islamabad?"

『 おはよう、ジム・マックレーン。 イスラマバードの西の状況はどうだ』



『おはようございます主席』

『今のところ主要幹線に大きな動きがありません。 しかし 、相変わらず人員の動きは活発です。常にイラン軍兵士と軍備がイスラマバード市街地に出入りしています』


『よし』




----------

イランとの再協議のテーブルをパキスタン国内で準備する為に、トランプ大統領は思い切った額を同国へ注ぎ込んだと見られた。


しかしながら、パキスタンとタリバン、すなわちアフガニスタンの関係性には依然として不透明な要素が多く存在した為、国防総省はタリバンの動向を無視することはできなかった。


2011年5月のアボタバード急襲作戦で、米軍はパキスタン側に事前通告せずオサマ・ビンラディンの潜伏先を奇襲、殺害した。


急襲後、米国とパキスタンの実態は「深刻に傷んだ関係」となり、米議会調査局(CRS)は、

『ビンラディンがパキスタン国内で長年潜伏していた事実が、米政府内で二国間関係への厳しい再検討を招き、対パキスタン支援の妥当性に強い疑問を生んだ』と整理した。


さらに、2011年11月のサララ事件でNATOの攻撃によりパキスタン兵24人が死亡する。

これによってパキスタンは、アフガニスタン向けNATO補給路を閉鎖した。


2012年7月、米国務長官ヒラリー・クリントンが弔意と遺憾を表明したのを受けて、ようやくアフガニスタンへの補給路は再開。


2018年には米国が、

『パキスタンがタリバンやハッカーニ・ネットワークへの対応で十分な行動を取っていない』として、少なくとも9億ドル規模の安全保障支援を停止した。


混迷するアフガニスタン情勢に対してバイデン大統領は2021年4月14日、米軍をアフガニスタンから撤収させると正式発表、2021年5月1日頃から撤収開始した。

しかしながら、撤収のレールを先に敷いたのはドナルド・トランプ政権で、2020年2月29日のドーハ合意で、米国はタリバンと「2021年5月までに全軍を撤収する」ことを約束していた。


実務上の撤収作業も、2020年2月29日のドーハ合意の後、米軍規模は段階的に縮小していたのだった。


話しをイスラマバードに戻す。

結局、4月22日に再協議のテーブルは整わず、ホルムズ海峡は硬直したままでの停戦延長措置となった。その結果、ペルシャ湾内に800隻を超える船舶が事実上の『留め置き』となり、そのうち日本関係船舶は45隻、日本籍船は5隻、一部の船員は下船、帰国している。

----------





『ただ主席、 少し気になることがあります』


『どうした ?』



『イスラマバード北西およそ三十キロ。古い遺跡群の周辺に、大隊規模の部隊が駐留、野営しています』


『古い遺跡?』


『はい。およそ2600年ほど前に存在した ガンダーラという国の首都タクシラの遺跡です』


『ほう、ガンダーラの首都。タクシラか…』


『映像は見れるのか?』


『こちらです』



ジム・マックレーンがキーを叩く。

乾いた打鍵音キータッチが中央司令室に小さく響き、次の瞬間、巨大スクリーンいっぱいの砂褐色の靄の向こうに、薄っすらと遺跡が現れた。



―ゴクッ―



誰かが息を呑む気配が、静まり返った室内でかえって目立った。




『この靄は砂嵐か(サンドストーム)?』



『ええ、二時間前からひどいサンドストームです』








―――――


B.C.508

Visākhamāsa(四~五月)、新月から四夜目。

ガンダーラ国首都タクシラ。


商業ギルド会館、 長老執務室。

重厚な机の上に、鮮やかな緑色にうずまきのような模様の孔雀石(マラカイト)が置いてあった。



ーヒュッ⋯ー



台座には”猫足”と呼ばれる台脚が四箇所に施されていて、その脚と脚の間を西の窓から吹き込んだ冷たい風が吹き抜けていった。


その風には、バクトリアの砂漠から来る鉄分を含んだ砂の匂いがした。



Vālukavāt(砂嵐が来る)o āgacchati.




長老はそう呟くと執務室の扉を開け、正面玄関への回廊を歩いて行った。



明かりのない暗い回廊の先には、 扉が開かれた正面玄関から、前庭の緑が照り返す明るい光が差し込んでいた。



プックサは、前庭の中程まで行くと立ち止まり、西の空を見上げた。




Handa(ふむ、), majjhanhi(昼過ぎには)ke atikkan(砂嵐が来る)te vālukavāto āgacchissati.




突然、黒毛の馬に乗ったパクトリア王室の正装をした男達が前庭に入って来て、ゆったりした脚並で隊列を整えながら、やがてプックサ長老の前で止まった。



Khemaṃ (平安を。)te. Dūraṃ (はるばる)āgantvā sv(ようこそ)āgataṃ.



Khemaṃ t(平安を)e.




ガンダーラ国首都タクシラにある、商業ギルド会館の前庭にバクトリア使節団が到着した。


代表格の男の頭巾には、金地金に緑の模様、額のうえに白い鷹が施されていた。

使者たちの乗った馬腹は白く泡立ち、鞍の革には、長駆の砂がこびりついていた。




BGM:

"Hussain Al Jassmi - Boshret Khei"

挿絵(By みてみん)








【脚注】

◯バクトリアからの使者

挿絵(By みてみん)




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