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 城門前の広場に、重い沈黙が落ちた。

 百腕王ゴアドリクは、玉座代わりの瓦礫に腰を下ろし、興味深そうにこちらを眺めている。

「どうした。

 来たからには、見せてみろ」

 悠真は一歩引いた位置で腕を組んだ。

 視線は鋭いが、動く気配はない。

「……最初は任せる」

 その一言で、空気が切り替わる。

「っしゃあ!」

 黒瀬が踏み込んだ。

 風圧が地面を抉り、加速した身体が一直線に突っ込む。

 ――だが。

 ゴアドリクの右腕が、別の腕に“差し替わる”。

 関節が鳴り、骨の軋む音。

「遅い」

 振り下ろされた一撃が、黒瀬を吹き飛ばす。

 間一髪、神谷の防御が割り込んだ。

「防御、間に合え!」

盾が砕け、衝撃が抜ける。

 黒瀬は転がりながら立ち上がり、歯を食いしばった。

「クソ……硬ぇ!」

「硬いんじゃない」

 アシュベルが冷静に言う。

「攻撃ごとに、最適な“腕”を切り替えてる」

 その瞬間、ゴアドリクの背から、水を纏った腕が伸びた。

 氷結が広場を走る。

「氷結操作……!」

 神谷が声を上げる。

 レオンが前へ出た。

「なら――焼き切る!」

 炎が炸裂し、氷を蒸発させる。


 だが、ゴアドリクは笑った。

「いい。

 ならば、これはどうだ」

 今度は雷を帯びた腕。

 地面に叩きつけられ、稲妻が奔る。

 アシュベルが舌打ちした。

「属性を“溜め”で使ってやがる……!」

「連携、来るぞ!」

 レオンが叫ぶ。

「神谷、起点を作れ!」

「了解!」

 神谷の結界が、ゴアドリクの足元に展開される。

 完全防御ではない――動きを“遅らせる”ための結界。

「今だ!」

 黒瀬が再突入。

 今度は横から、風刃を複数展開。

 ゴアドリクの腕が防御に回る――

 その一瞬。

 アシュベルの雷撃が、防御の隙間を撃ち抜いた。

「――効いた!」

 肉が焼ける音。

 だが、王は倒れない。


 むしろ、愉快そうに笑った。

「いい……いいぞ。

 兵としては、上出来だ」

 腕が、また増える。

 地面に転がっていた死体から、無理矢理“接合”されていく。

 黒瀬が息を荒くする。

「おい……増えてね?」

「王とは、集めるものだ」

 ゴアドリクは誇らしげに言った。


「力も、命も、恐怖もな」


 その背後で、悠真は静かに観察していた。

(……なるほど)

 攻撃の切り替え。

 溜めの間。

 接合の瞬間。

(まだ、見せ札を残してる)

 ゴアドリクが、こちらを見た。

 いや――悠真を見た。

「お前は来ないのか、拳の者」

 悠真は視線を逸らさず、答える。

「…野暮ってもんだろ」

 その瞬間、

 王の笑みが、少しだけ歪んだ。

「そうか。なら――

 まずは、その兵たちを

 “王の部品”にしてからだ」

 地面が、震えた。


 第二段階が、始まる。



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