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 転移陣から悠真たちが出てくる。

 アルセリアのそれとは違う。

 光は鈍く、色は濁り、魔力の流れがどこか“荒い”。

「……雰囲気、違うな」

 神谷がぽつりと呟く。

 光が収束し、視界が開けた瞬間――

 悠真は、思わず息を止めた。

 石造りの街。

 だが整然としていない。

 建物のあちこちに補修痕があり、結界柱は必要以上に厚い。

 空は赤みがかり、遠くの地平線には黒い雲が渦を巻いていた。

「ここが……魔王領の“近く”か」

 悠真が言うと、隣で腕を組んでいた男が、ニヤッと笑った。

「久しぶりだなここも。」

 レオン・グレンデルだった。

「アメリカの門から入ったらここの周辺に出たんだもんな。びっくりしたぜ」

「……相変わらず、危険そうな場所にいるな」

「褒め言葉として受け取っとく」

 レオンはそう言って、街の外――

 魔王領の方向へ視線を向けた。


 都市を抜け、しばらく歩くと魔王領だ。

 空気が、変わった。

 重い。

 圧迫感があるわけじゃない。

 ただ、“何かが常に見ている”感覚。

 そして。

「……なぁ」

 黒瀬が、声を潜めた。

「前方。見えるか?」

 視線の先。

 岩陰や瓦礫の影に――

 魔物たちがいた。

 だが、襲ってこない。

 逃げない。

 伏せている。

 頭を低くし、地に体を這わせ、

 まるで――祈るように。

「……ひれ伏してる?」

 神谷が信じられないものを見る目で言った。

「え、なにこれ。

 魔王領って、こういう宗教施設だっけ?」

 黒瀬が首を傾げ、次の瞬間、いつもの調子で言う。

「なぁ悠真」

「……なんだよ」

「あれ倒していいか?」

「は?」

「いや、ほら。

 経験値だろ?」

 沈黙。

 レオンが、吹き出した。

「ははっ!

 相変わらずだな、お前の仲間!」

「いやだって!

 ほら!完全にフリーじゃん!

 襲ってこないし!

 今なら効率いいだろ!」

 黒瀬は真顔だった。

 だが――

「やめとけ」

 レオンの声が、低く落ちた。

 黒瀬が眉をひそめる。

「……冗談だって」

「冗談でも、だ」

 レオンは魔物たちから目を離さず、続けた。

「これは“降伏”じゃねぇ。

 警戒でもない。」

 悠真も、気づいていた。

 魔物たちは――

 悠真を見ていない。

 見ているのは、

 “何か”だ。

 あるいは――

 “誰か”。

「……歓迎されてないな」

 悠真が、静かに言う。

 レオンが、笑みを消したまま頷いた。

「いや」

 一拍置いて。

「恐れられてる」

 その言葉と同時。

 伏せていた魔物の一体が、

 ――音もなく、消えた。

 逃げたのではない。

 存在を引っ込めたかのように。

 黒瀬が、喉を鳴らす。

「……あー。

 これ、経験値とか言ってる場合じゃないやつだな」

 悠真は、拳を握った。

 アルセリアとは違う。

 ここは、敵の庭だ。

 そして――

 その庭は、もう。



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