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 門の向こう側は、最初から荒れていた。

 灰色の雲が低く垂れ込み、

 大地には無数の焦げ跡。

 空気そのものが帯電し、呼吸のたびに喉がひりつく。

「……歓迎はされていないようだな」

 アシュベル・フォン・アイゼンリヒトは、外套を翻しながら一歩踏み出した。

 瞬間――

 雷鳴。

 前方の岩陰から、魔獣が姿を現す。

 電撃を纏った獣型。

 反応速度、攻撃密度、どれも地球のダンジョンとは段違い。

「ほう……」

 アシュベルは口角をわずかに上げた。

 次の瞬間、

 雷が落ちる。

 天からではない。

 彼自身からだ。

 獣は一瞬で焼き切れ、霧散する。

 その直後――

 身体の内側を、微かな高揚が走った。

「……やはりか」

 拳を握る。

 雷の出力が、明らかに増している。

「悠真だけが異常なのではない。

 この世界が……“そういう仕組み”だ」

 アシュベルは、遠くに広がる雷雲を見据えた。

「ならば――

 競う価値は、あるな。相原悠真」

 雷帝は、確かに“同じ舞台”に立った。


 静寂。

 音が、ない。

 崩れた石造都市。

 月も星もない空。

 影だけが、異様に濃い。

「……悪くない」

 ダリオ・エルナンデスは、影の中で微笑んだ。

 足元の影が、遅れて動く。

 まるで意思を持つかのように。

「地球の闇は、ずいぶんと素直だったが……」

 影が、彼の足首に絡みつく。

 敵意ではない。

 呼びかけだ。

 ダリオは、しゃがみ込む。

「契約か?」

 影が、ゆらりと揺れた。

 次の瞬間、

 頭の奥に、囁きが流れ込む。

――ゼロ

――世界を壊した者

――また来る

 ダリオは、息を吐いた。

「……なるほど。

 主役は、俺じゃないらしい」

 だが――

 使える。

 影を使い、

 情報を売り、

 立場を変え、

 世界を渡る。

「ゼロが壊すなら、

 俺は――“隙間”をいただく」

 闇は、彼を拒まなかった。


 最初から、戦争だった。

 門を抜けた瞬間、

 砂嵐。

 爆炎。

 叫び声。

「ははっ……!」

 カリム・シャヒーンは、心底楽しそうに笑った。

 魔族の集団が突進してくる。

 戦列を組み、魔力砲を構える。

「いいねぇ……

 こういうのを待ってたんだよ!」

 大地が割れる。

 砂が隆起し、

 槍となり、

 壁となる。

 魔族が吹き飛び、悲鳴を上げる。

 だが――

 後方から、異様な気配。

 魔族将クラス。

「お?」

 カリムは、舌なめずりした。

「魔王の犬か。

 ――最高じゃねぇか」

 戦闘の最中、

 彼は感じ取っていた。

 この世界は、

 戦うために存在している。

「ゼロ?

 そんなのがいるなら――」

 拳を握る。

「そいつと戦える日まで、

 この世界、荒らし尽くしてやる」

 侵略派魔王と、

 最も早く噛み合う男が、そこにいた。

 同じ異世界。

 違う入口。

 違う答え。

 だが全員が、

 ひとつの存在を意識し始めていた。

ゼロ。

相原悠真。



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