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新宿ゲート前、空気は冷たく張り詰めていた。

前回とは違う。

明確な敵意も、明確な時間制限もある。

「……準備完了」

黒瀬が装備を確認しながら言う。

「また異世界か。

 修学旅行より回数多いんだけど、俺」

「比べるな」

神谷が短く返す。

「今回は“調査”じゃない。

 先に行った連中の後始末だ」

悠真は黙って門を見つめていた。

青白い光の向こう。

アルセリア――ではない。

今回の座標は、アルセリア外縁・魔王領寄り。

凛の声が通信に割り込む。

『いい? 今回は交戦は最小限。

 目的は状況確認と、十支族との合流よ』

「了解」

悠真は短く答え、門へと一歩踏み出した。


視界が白に染まり、

次の瞬間。

――音が、消えた。

風も、熱も、魔力の流れすら止まったような感覚。

黒瀬が顔をしかめる。

「……おい、これ」

神谷も察する。

「空気が……重い。

 いや、圧がかかってる」


「――ほう」

低く、地を震わせる声。

空間が歪み、

黒い裂け目のようなものが開いた。

そこから現れたのは――

人型。だが、人ではない。

王冠にも似た角。

背後に揺らめく黒紫の魔力。

侵略派魔王の一柱。

名を名乗ることすら不要な“格”。

黒瀬が息を呑む。

「……冗談だろ」

神谷は盾を構えるが、汗が滲む。

「こいつ……

 今までの魔族と次元が違う」

魔王は悠真を見て、口元を歪めた。

「ゼロ……お前だな」

悠真は一歩、前に出た。

魔王が、指を鳴らす。

空間が歪み、

黒い魔力の刃が数十本、一斉に放たれた。

本来なら、都市一つを薙ぎ払える規模。

黒瀬が叫ぶ。

「避け――」

言い終わる前。

悠真は、ただ立っていた。

動かない。

構えない。

力を解放する気配すらない。

――なのに。

魔力の刃は、

悠真の半径数メートル手前で“霧散”した。

爆発も衝撃もない。

まるで、最初から存在しなかったかのように。

魔王の表情が、初めて歪む。

「……拒絶された?」

悠真は静かに言った。

「お前は何だ?やるのか?」

声は低く、淡々としていた。

魔王は一瞬、沈黙し――

次の瞬間、笑った。

「なるほど……

 これは“育つ”な」

空間が再び歪み、魔王の姿が消える。

最後に残されたのは、

重圧だけが抜けたダンジョン。

しばらく誰も動けなかった。

黒瀬が、乾いた声で言う。

「……なぁ」

「さっきの、攻撃……

 俺らなら、一瞬で消し飛んでたよな」

神谷は悠真を見る。

「お前……

 いつの間に、そんな所まで行った」

悠真は視線を落とす。

「……分からない」

本音だった。

ただ一つ分かるのは。

(俺はもう、

 “門を越える前の人間”じゃない)

そして。

侵略派魔王が動いた。

それは、偶然じゃない。

世界は――

ゼロを中心に、戦争へ近づいている。



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