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その会合は、

公式なものではなかった。

議事録もなければ、

記者もいない。

ただ――

世界の最上位戦力だけが集まっていた。

「……で?」

誰かが、静かに口を開く。

「俺たち、どうする?」

短い一言だった。

だが、その場にいた全員が意味を理解していた。

異世界。

門。

レオンの転移。

そして――ゼロの存在。

話題に事欠くはずがない。

「レオンは生きてる」

「向こうには文明がある」

「門は一つじゃない」

事実だけが、淡々と共有されていく。

誰も声を荒げない。

誰も結論を急がない。

十支族は、

そういう連中だった。

「……正直、待つって選択もある」

誰かが言った。

「政府もG.O.Dも、まだ整理できてない」

「下手に動けば、世界が割れる」

それは、正論だった。

だからこそ――

空気が重くなる。

しばらく沈黙が落ちたあと、

別の声が続く。

「でもさ」

その一言で、全員の視線が集まった。

「レオン一人に任せていいのか?」

「ゼロってやつに、全部背負わせていいのか?」

誰も、すぐには答えなかった。

だが、

答えはもう決まっていた。

「……俺は、行くけどな」

ぽつりと落とされた言葉。

「世界がどうなるかは分からん」

「だが、現場を知らずに語るのは嫌だ」

誰かが小さく笑う。

「同意だ」

「俺もだ」

「……結局、全員かよ」

そう呟きながら、

誰も否定しなかった。

そして――

最後に、誰かが言った。

「じゃあ――行こうか」

命令ではない。

義務でもない。

ただの、合意。

こうして、

十支族はそれぞれの門へ向かうことを決めた。

ただ――

十支族が、互いに目を見て、頷いただけだ。

「じゃあ、各々で行くか」

誰かのその一言で、

会合は自然解散となった。

それぞれが、自分の“門”へ向かう。

世界がまだ、知らないうちに。

霧の立ち込める石造りの施設。

古城の地下、

厳重に封鎖された転移門の前で、

アーサー・シルヴァは静かに祈っていた。

「……異世界、か」

柔らかな光が、彼の掌に灯る。

幻でもなく、

攻撃でもない。

それはただ、人を安心させる光だった。

「力を振るうためではない」

「“確かめる”ために行く」

王族としての矜持。

中立としての責務。

彼は誰にも告げず、

一人で門をくぐった。


重厚なコンクリート施設。

赤い警告灯が点滅する中、

アシュベルは腕を鳴らした。

「…相原悠真」

その名を思い出すだけで、

雷が微かに走る。

「俺より先に“向こう”を見た男」

「……面白くない」

だが同時に、

胸が高鳴るのを抑えられなかった。

「異世界で、差が縮まるかどうか」

「確かめに行くだけだ」

雷鳴と共に、

彼は門を踏み越えた。


静かな研究施設。

水盤に映る門の揺らぎを、

リュシアンはじっと見つめていた。

「……異世界」

冷静な目。

感情は、ほとんど動かない。

「地球と同じように、争いもある」

「なら、距離を測る必要がある」

水は、形を変える。

敵にも、

味方にも。

彼は誰にも干渉せず、

淡々と門を越えた。


吹雪の中に建つ、

地下要塞。

セルゲイは笑っていた。

「異世界、魔王、ゼロ……」

「どれも、強そうだ」

氷が、床を覆う。

「戦争になるなら、それでいい」

「強い世界が、正しい」

彼にとって、

敵か味方かは問題ではない。

――勝てるかどうか、だ。

門が開くと同時に、

冷気が吸い込まれていった。


無音の実験区画。

振動を抑え込む特殊構造の中で、

リーメイは目を閉じていた。

「向こうの世界……」

微細な振動が、

門の“歪み”を伝えてくる。

「……不安定」

「でも、面白いネ」

彼女は判断が早い。

「悠真が行った世界なら

悪くはないアル」

短く息を吐き、

静かに門を越えた。


地下礼拝堂。

闇の中で、

ダリオは一人、笑っていた。

「世界が二つに増えた?」

「……最高じゃないか」

影が、蠢く。

「混乱、欲望、裏切り」

「全部、増える」

彼は誰にも告げない。

告げる必要が、ないからだ。

影と共に、

門の向こうへ溶けていった。


香と静寂。

アニルは、

既に“向こう”を覗いていた。

「……ふむ」

誰にも聞こえない声で、呟く。

「ゼロ」

「魔王」

「境界」

彼はまだ、

行くとも、行かぬとも言っていない。

ただ一つだけ、確信していた。

「……これは、面白い盤面だ」


灼熱の施設。

カリムは豪快に笑った。

「異世界だろうが何だろうが」

「強い奴がいるなら、それでいい」

砂が渦を巻く。

「戦える場所が増えただけだ!」

彼は迷わない。

門へと歩き出す背中には、

一切の躊躇がなかった。



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