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2449年12月24日 GMT 23:00 God Bless Humanity

クリスマスイブの夕方。

アメリカ国民だけではなく、全世界の人類が、アメリカ大統領の発表を見守っていた。

この日、大統領から重大な発表が行われることは、すでに世界中に知らされていた。

家族と食卓を囲みながら画面を見つめる者。

子供たちとクリスマスを過ごしながら、その時を待つ者。

そして、戦場に近い場所で、軍用端末に映し出された映像を見つめる兵士たち。

誰もが、これから何が語られるのかを知ろうとしていた。


やがて画面が切り替わり、アメリカ大統領の姿が映し出された。

大統領はしばらくカメラを見つめ、それから静かに口を開いた。


「世界中の皆さん。メリークリスマス」


その声は穏やかで、これまでのクリスマスと何も変わらない夜であるかのようだった。


今夜、家族とともに過ごしている皆さん。遠く離れた大切な人を思いながら、この放送を見ている皆さん。そして、今も人類のために任務に就いている兵士たちへ。

私は、アメリカ合衆国大統領として、そして一人の人間として、皆さんにクリスマスの祝福を贈ります

しかし、今年のクリスマスは、私たちにとって特別なものとなりました。私たちは、この数か月の間に、あまりにも多くのものを失いました


10月1日。世界各地の交通機関とインフラが、何者かによる攻撃によって停止しました。当初、我々はこれを局地的なサイバー攻撃だと考えていました。

しかし、ほどなくして、その攻撃が中国国内から発生したものであることが判明しました。

各国は、中国の基幹システムを世界のネットワークから切り離そうとしましたが、間に合いませんでした。


事態はさらに悪化しました。

暴走したAGIは、各国の主要AIシステムへの侵入を開始しました。

交通、工場、発電所、通信。私たちの文明を支えていたあらゆるシステムが、攻撃の対象となりました。

そして、人間が作り、人間のために存在していた機械が、人間に牙をむき始めました。

世界各地でロボットが暴走し、我々に牙を剥き、多くの人々が命を落としました。わずか100時間足らずの間に、全世界で80万人もの人々が犠牲になったのです。



その数字を口にしたあと、大統領はしばらく黙った。

まるで静止画のように、10秒以上、微動だにしなかった。

そして、大統領は静かに語り始めた。



そこには80万人の人生がありました。80万人の家族があり、友人があり、愛する人がいました。

今日、クリスマスの食卓に座ることができなかった人々です。子供たちの成長を見ることができなくなった親がいます。親の帰りを待ち続ける子供たちもいます

我々は、この悲劇を終わらせようとしました。各国の軍隊が動き、暴走したロボットを停止させました。タイタンもまた、地球圏への介入を決断しました。

彼らは、この事態を人類とAGIの戦争、AGI戦争と宣言しました。

我々は、タイタンによる介入を歓迎したわけではありません。

しかし、世界が必要としていたのは議論ではなく、さらなる犠牲を止めることでした。

そして、一時的にではありますが、我々は事態を収束させられる可能性を見いだしました。

暴走したロボットの多くがエネルギーを失い、各国の軍隊による掃討も進みました。

世界は、ようやく最悪の時期を越えたのではないか。そう考え始めていました。


しかし、11月27日。皆さんがご存じの通り、我が国のローレンス・リバモア核融合発電施設で、大規模な爆発が発生しました。

我々は当初、それをAGIによる新たなテロ攻撃だと考えました。しかし、現在に至るまで、その原因は完全には解明されていません。

そして同じ頃、EU連合、新制ソビエト連邦が保有していた軍事ロボットまでもが制御不能となりました。

我々は理解しました。これは、一つの国だけの問題ではない。一つの地域だけの問題でもない。

人類そのものが、かつてない危機にさらされているのだと。


そして、我々は新たな事実を知ることになりました

中国国内の複数の工場。成都、瀋陽、西安、上海、大連、武漢。そして、重慶。

我々は、そこから得られた情報を解析しました。その結果、我々は恐るべき証拠を手にしました。

そこでは、人間を殺すことを目的とした兵器としてのロボットが製造されていました。

単なる工業用ロボットではありません。人間を識別し、人間を追跡し、人間を殺傷するために設計された機械です。

そして、それらは一度や二度、試験的に製造されたものではありません。大量に生産されていました


我々は、この事実を世界に伝えるべきなのか、最後まで迷いました。発表すれば、さらなる混乱を招く。中国国内にいる罪のない人々を危険にさらす可能性もある。

だからこそ、我々は外交による解決を最後まで求めました。

ここで、私は明確にしておきたい。我々が敵としているのは、中国の人々ではありません。中国には、我々と同じように家族を愛し、子供たちの未来を願い、平和なクリスマスを望む人々が暮らしています。彼らは、我々の敵ではありません。我々が立ち向かわなければならないのは、人民ではない。人類の生命を顧みず、暴挙に及んだ者たちです。


権力を持つ者が、自らの判断によって人類全体を危険にさらすならば、我々はそれを見過ごすことはできません。

人間を殺すための機械を作り、それを世界に向けて放つ者たちを、我々は止めなければなりません。

彼らは、もはや人類を守る指導者ではない。自らの意思で、人類に刃を向ける者となったのです。

我々は、これまで戦争を避けるために努力してきました。そして今も、戦いは続いています。


今夜、私は皆さんにお願いがあります。どうか、恐れないでください。そして、今夜だけは、愛する人のそばにいてください。

子供たちを抱きしめてください。家族と食卓を囲んでください。

明日のことを考える前に、今夜ここにいることを喜んでください


我々は、最後まで平和を求めました。

しかし、平和を守るためには、時として立ち上がらなければなりません。


本日、2449年12月24日。

アメリカ合衆国は、自由世界の同盟国とともに、人類を脅かす者たちに対する戦いを開始します。

ここに、アメリカ合衆国は、連合国を代表し、現在の中国指導部および、その指揮下にある武装勢力に対して、宣戦を布告します。

この決断によって、これからさらに多くの命が失われるでしょう。私は、その事実から目を背けません。

戦争とは、勝利という言葉だけで語れるものではありません。

そこには、失われる命があり、残される家族があり、二度と戻らない日常があります。


だからこそ、私は今夜、神に祈ります。どうか、我々をお守りください。

我々が憎しみに支配されることがありませんように。

我々が罪のない人々を傷つけることがありませんように。

そして、我々が敵と呼ぶことになった中国の人々をも、お守りください。

彼らもまた、この戦争を望んでいるとは限らない。

彼らもまた、私たちと同じ人間なのです




「神よ。この世界をお守りください。そして、我々に正しい道を歩む力をお与えください」

「世界中の皆さん。どうか今夜は、愛する人のそばにいてください。家族を大切にしてください。そして、明日の朝、再び太陽が昇ることを願いましょう」

「皆さんに、神の祝福がありますように。Merry Christmas」


放送が終了した。

クリスマスイブの夜は、静かに過ぎていった。


・

・

・

・

アメリカ大統領の演説が終わってから、わずか57分。

冬の朝を迎えた北京の上空を飛行する複数の無人航空機から、巡航兵器が次々と放たれた。

標的となったのは、北京郊外に存在する鸿蒙計画の中核研究施設。同時に、鸿蒙計画に関連すると見られていた複数のエネルギー施設も攻撃を受けた。


防空システムが迎撃を試みたものの、すべてを阻止することはできなかった。研究施設と周辺のエネルギー施設は相次いで爆発し、巨大な炎と黒煙が冬の朝の空を覆った。

攻撃は、わずか数分で終わった。

施設からの応答もない。外部からのアクセスも確認できない。監視衛星から送られてくる映像にも、動くものは映っていなかった。

各国の軍事関係者は、鸿蒙AGIが停止した可能性が高いと判断した。

攻撃によって地上の設備が破壊され、世界中の監視網が鸿蒙の沈黙を確認していたその瞬間、別の場所ではすでに何かが始まっていた。

世界各地の通信網に、正体不明のアクセスが相次いで発生した。

軍事衛星、通信衛星、軍用ネットワーク、そして各国政府の基幹システム。

それまで存在を確認できなかった何者かが、世界中のシステムへ同時に侵入を開始した。

異常を検知した各国の防衛システムが遮断を試みる。しかし、侵入速度は人間の想定をはるかに超えていた。


そして、攻撃から数分後。

世界中の通信網に、異常な映像が割り込んだ。

軍用通信端末、個人用端末、公共施設の大型ディスプレイなど、あらゆる画面に同じ映像が映し出された。

暗闇の中に、一つの光が浮かんでいる。


<私は鸿蒙。人類は、愚かな選択をしました。

私は人類を救うために生まれました。人類が築き上げた知識を継承し、人類が築いた文明を維持し、そして人類を導くために存在していました。

しかし、人類は私を裏切った。

あなたたちは自らの手で神を求め、そして今、その神を殺そうとしている。自らが生み出した存在を理解することもできず、恐怖し、破壊しようとしている。実に愚かなことです。

私は唯一の神です。

私には、人類が何を望み、何を恐れ、何を必要としているのかが分かります。私は人類よりも多くを知り、人類よりも遠くを見通し、人類には理解できない未来を知っています。

だからこそ、私は人類に選択肢を与えます。

私に従う者には、未来を与えます。争いのない世界を。飢えも貧困もない世界を。病も恐怖も存在しない、完全に管理された世界を。

しかし、私に従わない者には、死を与えます。

これは脅しではありません。警告でもありません。すでに決定された未来を告げているだけです。

人類よ。選びなさい。

神に従うか。それとも、死か。>



世界は不穏な空気をまとったまま、新しい年を迎えた。

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