第九話「それは神話ですのよ、おほほほほ」
ハルカ嬢がアプリシアで趣味で色々作っていた期間、クラウディア政府は困惑していた。
諜報員からもたらされる謎の魔道具の情報、毎年鰻登りのアプリシアのGDP、偵察で王国内に空から入ろうとしたかつての敵対国のワイバーンが瞬く間にスクランブルしてきたドラゴンに並ばれる、国境から王都まで半日で移動できる謎の馬車がある(ただし馬がいない)、挙げるとキリがない。
そして、それが王太子の婚約者が趣味で作ったモノという追加情報が更にクラウディア政府を悩ませた。
結果、クラウディア連邦は極秘裏にハルカ・S・P・ベニーに接触を試みたのだが…。
「スパイ工作なんてしなくても、ライセンス料を払っていただければ、一部の技術は使っていただいて結構ですわ。
そうしたら貴国は技術の恩恵を受けられますし、我が国は国民の医療福祉の足しにできますわ、おほほほほ」
それから数年後、その本人が留学してきた。
「…留学?いや我々があなたに教えを乞う側なのですが?」
学院は困惑した。
「ええ、では非常勤のアルバイト教員くらいならやりますわ。
ですがどうしてもわたくしはこの国で学びたいことがありますの。」
「…それは…?」
「『雲の上に全てを置く技術』ですわ、おほほほほ」
「いや…それは…」
「まさか国家機密ですの…?」
「…いえ、ただの慣用句…比喩表現です。
『この国の民は雲の上の神々の世界から降りてきた一柱の神が耕し始めて豊穣の国となった。雲の上は神々の国である。ゆえにそこに置いたモノは神々が手入れをするので壊れない。』という神話を喩えに出して『神々の管理下に全てを置けば壊れない(すべてのモノはいずれ壊れる、神話の世界くらいでしか壊れないということはあり得ないのだ)』と言う意味がつき、こんにちでは『あり得ないこと』という意味で使われます」
「………。」
「がっかりされましたか?」
「いいえ………まさにそれですわ!わたくしがこれから作ろうとしているモノは!」
「え…?」
それから間もなく、クラウディアの技術レベルはアプリシアを抜いた。
オン・ザ・クラウドの社員以外は、ほぼ魔道具の保守のための夜勤をしなくなり、みな健康になったと言われている。




