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第十話「雲の上の中身ですわ、おほほほほ」

アプリシア王国の王宮の地下室。

いや、正確には地下牢の独房の一室をハルカ嬢が魔改造した部屋。

手のひらサイズの金属板のような物を扉の脇の箱に当てると「ピ」という音を立てて扉の鍵が開く。

この板を持っていないと入れない部屋があった。


部屋に入ると、外の季節に関わらず常に肌寒い。

部屋の中は冷たい風を出す魔道具と計算用の魔道具が出す音でとてもうるさい。

すぐ隣にいる人と会話するだけでも大声になってしまう。


その中の、人の背丈より大きい箱の扉を開けて、ヨシチェックとアカリ嬢と、作業着の数人が会話をしていた。

「ここに『ルーター』設置でいいですか?」

「空いている場所ならどこでもヨシ!」

「そんなわけないでしょう、真面目にやってくださいまし、殿下」

「すまん…指示書には『36U』って書いてある」

「『メディアコンバータ』は?」

「『38Uの棚板の上』らしい…。書いてある通りのことしか言ってないが、これで本当に通じているのか?」

「通じていますわよ、殿下」


翌日。

「セッション確認できて『ルーター』までの疎通できたので『コアスイッチ』接続します」

「これ、わかってないとまずいやつ…?」

「わからないからこその『雲の上基盤』と、派遣された作業員に任せる、文字通り『オン・ザ・クラウド』ですのよ。

『キャリア』の『IP VPN』で『雲の上の世界』と『BGP』を使って繋いでいると書いてありますわね」

「まったくもってわからん。

とりあえず任せておけばいいんだな?

…で、実際はどこと繋がっているんだ?」

「クラウディアの南側にある『データセンター』だそうですわ。『具体的な場所は非公開』らしいですが」

「クラウディアの中でもこちらに近い場所なんだな。

距離が長いと料金が上がるから、良心的な設計になっているのか?」

「そうではありませんわね。

そういう『リージョン』になっているので…」

「リージョン…?」

「リージョンですわね。

あと『DRサイト』もちゃんとあるみたいですわ。

『SLA 99.99%』の契約ですわね」

「すごいのか?」

「『DRサイト』は、災害とか戦争で『データセンター』が潰れても、少し離れた別の場所に複製が残るようになっていて、使い続けられる仕組みですわね。

『SLA 99.99%』は、簡単にいうと『1年間で1時間以上止まったら契約違反』になりますの。

その場合、何かしらの料金の精算になりますわね」

「…普通の人間が考えることなのか?

国王である父上ですらそんなこと考えていないと思うが」

「…第二の都市に臨時首都機能を持たせる構想は、国の政にも参考にできるかもしれわませんわね」

「『雲の上の世界』とはどんなものかと思ったら…これは神話よりすごいのではないか…?」

「そうですわね、クラウディアの神話はあくまで、寓話や御伽噺ですから…。

まぁ、それを具現化してしまうハルカ嬢は…ある意味神以上の存在ですわね」

「…敵に回したくないな」

「…殿下、既に敵に回していらっしゃいますけど?」

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